腐った伯爵家を捨てて 戦姫の副団長はじめます~溢れる魔力とホムンクルス貸しますか? 高いですよ?~

薄味メロン

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7 男爵家に婿入りです

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 嫁の実家ーー男爵家で目を覚ました俺は、応接室に呼び出されていた。

 質素な椅子に座り、男爵の言葉を聞き返す。

「俺が入り婿に……?」

「うむ。ここに、伯爵閣下から頂いた手紙がある」

 渡された手紙の印は、確かに父である伯爵家当主の物だ。

 貴族らしい長々とした言葉で、“俺を入り婿にしてはどうか?” そう書いてある。

 隣に座っていたミルトも、驚いた顔で手紙を覗き込んでいた。

「次男殿を我が家で治療した礼だと、伝令から聞かされている」

「……なるほど」

 俺の治療を男爵家で行い、ほとぼりが冷めるのを待つ。

 そうなったとミルトに聞いたが、伯爵は次の手をぶち込んできたようだ。

「クズの厄介払いか」

 はぁ、と溜め息をついて、対面に座る男爵に目を向ける。

 手紙を返し、軽く頭を下げた。

「面倒に巻き込んでしまい、申し訳ありません」

「……いや、次男殿が悪いわけではない」

 男爵は手紙を懐に仕舞い、姿勢を正す。

 俺の目をまっすぐに見据えて、ゆっくりと言葉を紡いだ。

「次男殿は我が男爵家に下ることになる。異論はないのだな?」

「男爵様がよろしいのであれば、私に異論はありません」

 提案の形にしてあるが、強い権力を持つ伯爵の命令だ。

 家系の選択は許嫁の範疇のため、他家に頼ることも出来ない。

 つまるところ、受け入れるしかないわけだ。

「承知した。その方は本日より、我が家の入り婿として扱う」

「かしこまりました。私のような者を助けていただき、誠にありがたく存じております」

「……うむ」

 ゆっくりと頷いた男爵が、ミルトに目を向ける。

 その視線を受けて、俺もミルトの方に体を向けた。

「そういうわけだから、今後は対等な感じで話してくれるか?」

「……うっ、うん。わかりま――わかった、よ?」

「よろしくな」

 俺は伯爵家の後ろ盾を失い、男爵家の居候になる。

 周囲はミルトの味方ばかりだ。

『俺は敵じゃないですよー。ミルト様と仲良しですよー』

 そうアピールしないと、寝首を掻かれかねない。

 ゴホンと咳ばらいをした男爵が、表情を引き締めた。

「我が家の状況は聞いているな?」

「はい。ミルトレイナさんに、魔物の被害が増えているとだけ」

「うむ。簡単に言うとそれに尽きる」

 男爵領は三方を魔物が出る森や山に囲まれ、唯一の出口は伯爵領に繋がっている。

 伯爵家の代替わりで支援がなくなり、領民の被害と流出が続いていると聞いた。

「魔物素材は衰退、加工業も大都市の周辺に流れておる」

 工場の新設で寂れ、危険だけが残された領地。

 どうにも、炭鉱や絹で栄えていた田舎街を連想させる。

「男爵家の者として答えてほしい」

 そう前置きをして、男爵が鋭い目を俺に向けた。

「入り婿を命じた伯爵家の意図が知りたい。婿殿の意見は?」

「男爵家と俺、両方を一度に消したいのでしょう」

「……やはりそうか」

 伯爵家を潰したい貴族は多いが、男爵家を助けたい貴族はいない。

 ここはうまみのない土地であり、共闘するにも立地が悪い。

 俺の悪評も加われば、なおさらだ。

「直接攻めずとも、いずれは音を上げる。そのような評価か」

「おそらくは」

 兵糧攻めをする城に、面倒な生贄を送り込む。

 そんなイメージだろう。

 前世を思い出す前の俺なら、間違いなく、男爵家を引掻きまわしていた。

「若輩者ですが、共に男爵領を盛り上げたく思っております」

「……うむ。我が娘と仲良くな」

「承知しました」

 深々と頭を下げ、ミルトに目配せをする。

 ミルトも笑みを深めて、頷いてくれた。

「病み上がりに呼び出してすまんな。2人とも下がってよい」

「失礼します」

 あれは本当に伯爵家の次男か?
 本物か?? ウワサと違い過ぎるのだが????

 そんな声が漏れ聞こえる扉に背を向けて、病室に戻る。

「きゅっ!」

「ん? ありがとう」

 出迎えてくれたホムンクルスに水を貰い、俺はベッドに腰掛けた。

 ほっと息を吐く俺をミルトが心配そうに見つめる。

「大丈夫で……だった? 疲れて、ない?」

「どっちかって言うと、緊張が解けた。そんな感じかな」

 相手はミルトの父ーーお義父さんと初めての会話だ。

 前世でも経験したことないし、緊張するに決まっている。

 部屋の端にいたホムンクルスたちが椅子を運び、ミルトに差し出していた。

「きゅっ!」

「あっ、うん。ありがとうね」

 椅子に座り、ミルトが微笑む。

 控えていたメイドは、仕事を奪われて苦笑いだ。

「言葉遣いは慣れない?」

「……えっとね? 頑張ろうって、思ってる、よ?」

「そっか」

 俺が寝首を掻かれる前に、仲良しアピールが出来るようにお願いします。

 そんな思いもあるが、ある程度の時間は必要だろう。

 それに、

「俺も同じような感じだけどな」

 今日から入り婿だ! なんて言われても、いまいちピンとこない。

 婿ってことは、結婚だろ?

 12歳の夫婦は、日本じゃ無理だ。

「入り婿よりも、弟だと思った方が話しやすいか?」

 ミルトの誕生日は4月で、俺は10月。

 小学生の姉弟だと思った方が、俺としてはイメージしやすい。

「よろしくね、ミルトお姉ちゃん」

 そう言って、クスリと笑う。

 ミルトは大きく目を開いて、なぜか顔を背けた。

「……いいかも」

 頬を赤らめているのは、気のせいだろう。

 彼女の兄弟は、兄が1人だけ。

 親戚にも、年下の男子はいないと聞いている。

「わたし、おねえちゃんになれるように、頑張る、ね……?」

「う、うん。よろしく……」

 とりあえず、深入りはしない。

 いろいろと追及しても、きっと誰も幸せにならない。

「それで、これからの予定なんだけど、リハビリをしようかなって思って」

「う、うん。お姉ちゃんも、賛成、だよ……?」

 伯爵家で気絶して、今日で10日。

 俺はそのほとんどをベットで過ごし、体が鈍っている。

 伯爵家や男爵家の現状に思うところはある。

 だが、なにをするにしても、体力を戻す必要があった。

「えっと、リハビリなら、こっち、かな」

 ミルトに手を引かれて、外にでる。

 鮮やかな魚が泳ぐ池に、葉を茂らせた目隠し用の木々。

 小さいながらも、綺麗な庭があった。

「殺風景だった伯爵家とは、大違いだな」

 芝生だけ伯爵家とは、なにもかもが違う。

 ミルトの味方ばかりがいる、いい家だ。

「頑張りすぎないのがいいのかなって、お姉ちゃんは思う、かも……」

「了解。ゆっくり動いてみるよ」

 温かい光を浴びながら、大きく肩を回す。

 病室からついてきたホムンクルスたちも、俺の真似をして肩を回していた。

「魔力は、大丈夫?」

「こいつらを動かして、ってこと?」

「う、うん。倒れないか、心配だから……」

 ホムンクルスは、動かすときにも魔力を使う。

 本にそう書いてあったそうだ。

 現状のホムンクルスは、25体。

 俺はそのすべてを動かしていた。

「大丈夫じゃないかな? なんとなくだけど、魔力が増えてる気がするし」

「……そうなの?」

「うん。本当になんとなくだけどね」

 この世界では、使えば使うほど、魔力が増える。

 筋トレと同じくらいの効力だが、確かに増える。

 逆に言うと、気絶するまで使っても、ドカンと増えたりはしない。

「いまは小さな重りを着けて生活してる。そんな感じかな」

「……そうなんだ」

 正確に言うと、小さな重りを25個つけて生活している感じだ。

 数が多くてそこそこ辛いが、心配させたくないから伏せておく。

「体調がよくなったら、本物の重りもつけてみようかな」

 12歳の若い体だ。

 筋肉も、相応に増えてくれるだろう。
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