落ちこぼれ“占い師”が造る 最強ギルド! ~個性豊かな仲間や年下王女に頼られる“ 立派なギルマス”になってました~

薄味メロン

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〈4〉飯を奪え! 邪魔者は殴れ!

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「なんだよ、噂の“占い師”かよ。こんなところで、雑魚がなにやってんだ?」

「食い物でも探してたんじゃないっすかね? ごみ箱漁って、残飯食ってたって話しっすよ」

「泥水でも飲んでんだんじゃね?」

 くははは、と男たちが腹を抱えている。

 目尻には涙まで浮かんでいるのだが、何が可笑しいんだ?

 俺が飯を探していたことか、それとも残飯を笑ってるのか。


--どちらにしても、許し難い行為だ。


「飯を笑うヤツは、死ぬぞ」


 飯のことすら考えられなくなるくらいの空腹を感じてみろ。

「飯を笑うヤツは、飯が食えなくなる呪いを浴びて、空腹で死ねばいい」

 食い物を馬鹿にするヤツは、万死に値する。

 許すつもりはない。

 そんな思いも込めて、大きく踏み込んだ。

「なっ!?」

 驚いた表情を浮かべた男の胃をピンポイントで殴りつける。

 腰の回転を加えて、衝撃で胃を潰すように打ち抜く。

「ごほっ……!」

 体をくの字に曲げて悶え苦しむ男の腰から、鞘に入ったままだった剣を引き抜いた。

 オマケとして、おさえた手の上から胃を蹴って、距離を取る。

 これで、しばらくは飯が食えないだろう。

 飯を馬鹿にした、当然の報いだ。

「飯に謝罪した後で、飯を寄越せ。そしたら見逃してやってもいい」

 そう声をかけながら、奪った剣を投げ捨てる・・・・・

 一瞬の静寂の後に、男たちの表情が変わっていた。

 呆然とする者、気を引き締める者、俺をまじまじと見る者。

「クソが……!! 調子に乗ってんじゃねぇよ!」

 痛みに顔を歪ませた男が、仲間から剣を奪って、駆けてくる。

 感じるのは、明確な殺意。

「死ねや、占い師!!!!」

 それでも、田舎にいた猪と比べたら、たいしたことはない。

 上段から振り下ろされた剣を左に避けて、男の手首に木の枝を叩き込む。

「くっ!?」

 手から離れた剣を横目に、男の喉を枝で突く。

「コホッ……」

 次はもう一度 胃を!!

 そう思って枝を突くが、大きく後ろに飛んで避けられた。

「クソ雑魚が!! アニキ! あいつは俺に--」

 男が何かを言い終わる前に剣を拾い上げて、構えて見せる。

「もう一度 言うぞ? 飯をくれるなら見逃してやる」

「…………」

 男たちが、目に見えてた動揺していた。

 リーダー格の男の額にも、うっすら光る汗が見える。

 チラリと振り向くと、少女は相変わらずそこにいて、呆然と俺の姿を見上げていた。

 良かった。

 潰れたパンは無事らしい。
  
 さすがに、この短時間で食ったりはしてないだろう。

 しないよな?

 ……まぁ、いい。

 まずは、男たちの方の飯だ。

「このまま、お前らを食えばいいのか?」

 さすがに人間を食ったことはないけど、食えないことはないだろう。

 火を通せばいけるよな?

 問題は、手の中にある剣が重いこと。

 やはり、“占い師”のスキル持ちに、剣は合わないらしい。

 だが、飯のためだ。

 無理だとか、合わないとか、そんなこと、どうでもいい。

「正当防衛で足の1本くらいなら、食ってもいいよな?」

 腕とどっちがいいだろうか?

 そんなことを考えていると、不意にリーダー格の男が、1歩だけ下がっていた。

「……なぁ、“占い師”。たぶんだが、お前は勘違いをしていると思うぜ? 俺たちに争う意味はないはずだ」

「……なにがだ?」

「俺たちは、冒険者。これもギルドから正式な依頼を受けた仕事だ」

 ……仕事?

「街の中での依頼なんて数がすくねぇから、勘違いするのも仕方がないがな。これを見てくれよ」

 男はそう言って、1枚の紙を俺の前に滑らせた。


---------

依頼:凶悪な少女の殺害

報酬:500万ギル

発行者:冒険者ギルド
受注者:(株)堅牢の壁

---------


 ……見覚えがある。

 冒険者じゃなくても受けられる仕事を受注した時に貰った紙と同じ物だ。

「凶悪な少女……」

 思わず背後に目が向く。

 ……人を殺しているような瞳には見えないが?

「なんでもよ。貴族ばかり、10人も殺したらしいぜ?」

「ち、違うわ! 私はそんなこと!!」

「てめぇは黙ってろ!!」

「ひぅ……」

 怯えた瞳に、ガタガタと震えている手足。

 どう見ても、演技だとは思えないが??

 この少女が、貴族ばかりを10人も殺している?

 それはないだろう。

 もし彼女に人を殺せるだけの力があるなら、俺を殺して逃げようとしていたはずだ。

「本物の依頼書なのか?」

「無論だ。手にとってくれていいぜ?」

「……わかった」

 男たちにも、少女にも注意を向けて、紙に手を伸ばす。

 紙の質、インクの色、判子の模様。

 どれを見ても、冒険者ギルドで貰った物と同じに見える。

「もしこの紙が本物なら、俺はお前らの飯を邪魔したクソ野郎になるな」

「?? ぉ、おお、そうだな」

 もしそうなら、全力で謝るしかない。

 知らなかったとは言え、飯を邪魔するなど、許されざる行為だ。

 問題は、本物か偽物かの判定が出来ないことなんだが……。

 やはり、背後の少女が人を殺しているようには、見えないんだよな。

 殺意剥き出しの、獣のような匂いが今もしないしな。

 むしろ、やっぱり、目の前にいる男たちの方が……。


「--そこまでだ!!」


 不意に、女性の声がした。

 大量の足音が聞こえてくる。

 ハッと周囲に目を向けると、いつの間にか鎧と槍を手にした男たちに囲まれていた。

 声の主は、崩れかけの屋根に乗った赤い髪の女性らしい。

「全員、その場に平伏せ!!」

 宝石の付いた剣を向けた彼女が、俺たちを見下ろしながら声を張り上げていた。
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