落ちこぼれ“占い師”が造る 最強ギルド! ~個性豊かな仲間や年下王女に頼られる“ 立派なギルマス”になってました~

薄味メロン

文字の大きさ
22 / 57

〈22〉大きな部屋に引っ越しました!

しおりを挟む
 リリの下着選びを待ってから、武器代わりに鉄の棒を2本だけ買って、冒険者ギルドを後にする。

 本当は、短剣や盾なんかも欲しかったんだけど、1番安いナイフでも金が足りず。

 西の森なら木の枝で十分だからと、リリの服を優先した結果だった。

 たくさんの服が入った籠をリリに背負ってもらって、昨日と同じ道を宿に向かって歩いていく。

「2人合わせて、小銀貨4枚か……。かなり安くしてくれたんじゃないか?」

「たぶん、そうだと思います。でも本当に良かったんですか? 奴隷の私に綺麗な柄の入った物なんて……」

「いいさ。可愛い子はオシャレしなきゃもったいないしな」

「ひゃぅ……!! えっと、あの……、ありがとうございます……」

「それに、リリが稼いだお金だからな」

 結局買ったのは、リリ用が3着、俺用が1着。

 リリの下着も入っているからあまりマジマジとは見れないけど、ツルを編んだ隙間から可愛らしい服が見え隠れしている。

 彼女自身も早速着替えたらしく、今はゆったりとした白いワンピースの上に、可愛らしい上着を纏っていた。

「その服も似合ってるぞ」

「本当ですか?」

「あぁ、清楚なお嬢様、って感じだな」

 背中の籠が悪目立ちするけど、可愛らしさ増し増し。

「あの籠を背負ってる子、可愛いよな」

「猫人の天使だな」

「わかる~」

 相変わらず見られてはいるが、気持ちは分かる。

 俺に対する嫉妬の視線も、甘んじて受け入れるしかなさそうだ。

「この辺で昼飯にするか。なにか食べたい物は?」

「あっ! えっとですね。ルーセントさんが、『買わずに帰った方がいいですよ』って、言ってました」

「ん? そうなのか?」

「はい。理由は『帰ってからのお楽しみ』だそうです」

 何だろうな?

 リリも知らされていないように見えるけど、相手がルーセントさんなら大丈夫だろう。

 素直に従っておくか方が賢明か。

 そんな気持ちで宿へと帰り、部屋につながる廊下に目を向ける。

「おや。あんたたちは、8号室の客だね? ちょっと待っとくれ」

 その途中で、恰幅の良い女性に、背後から呼び止められた。

 高そうな服に、豪華な装飾の数々。

 余分な贅肉が腹に付くなんて、間違いなく金持ちだ!

 たぶん、この宿のオーナーだろう!

 うらやまし過ぎる!!

「はいよ、新しい部屋の鍵」

「新しい部屋?」

「おや、聞いてないのかい? 冒険者ギルドの金で泊まらせていいことになったからね。もとから泊まってた冒険者はみんな、ランクアップさね」

 部屋が足りないからと、冒険者ギルドとの話し合いで、宿側がごり押ししたらしい。

 俺たちは、1泊6000ルネンの部屋に移動だとか。

 無料で!

「気に入ったら、ずっと高い部屋を借りてくれてもいいさね。ふひひ」

 そのまま鍵を押しつけて、女性は受付に戻っていった。

 手の中にある鍵を見下ろして、リリに目を向ける。

 昨日の部屋の2倍って聞くと驚きもするが、支払われるのは俺の金じゃないからな。

 どうせタダで泊まれるのなら、高い部屋の方がいいに決まっている。

「それじゃ行くか」

「はい!」

 目を輝かせたリリと共に元の部屋から本を回収して、2階にあがる。

 廊下もドアも、昨日の部屋とほとんど一緒だったけど、ドアの向こうは全てが違っていた。

「わっ……!」

「広いな」

 思わずそんな言葉が口から漏れていく。

「ご主人様、見てください。台所がありますよ!? それにお風呂も!」

 部屋の大きさは、昨日の2倍はあって、風呂とトイレ、冷蔵庫付きの台所。

 玄関には下駄箱が、部屋の中には備え付けのタンスまであった。

 衝立で分けられたベッドもひとまわり大きくて、見るからにふかふかだ。

「ずこいな」

「はい。ご主人様のすごさには負けますが、素敵な部屋ですね」

 両手を広げて、楽しそうにしているのはいいのだが、どうしてそうなった?

 まぁ、いいんだけどさ。

--ピンポーン。

「ん?」

「誰か来たんでしょうか?」

 不意に鳴り響いたチャイムの音に、リリが動きを止めて警戒心をにじませる。

 ドアに目を向けたリリを手で制して、空いた穴から外を眺めた。

 立っていたのは、ついさっき見た、恰幅のいい女性が1人。

「冒険者ギルドから届け物さね。外に置いとくから、勝手にとってきな」

 それだけを言い残して、ボテリと背を向けた。

 ドアの外にあったのは、大きな木箱と、デトワール様宛と書かれた1枚の紙。

「ぐっ……、重たいな……。リリ、悪いけど手伝ってくれるか?」

「はい!」

 2人がかりで何とか部屋の中に運び入れて、蓋に手をかける。

 見えてきたのは、肉の塊や色とりどりの野菜たち。

「食材の山ですね!」

「みたいだな」

 差出人はボンさん--になっているけど、たぶん、冒険者ギルドからだろう。

 手紙には、『西の森を中心に活動する全ギルドへの補填
』だとあった。

 さすが国営ギルド!

 綺麗なサシが入った美味しそうな肉や、新鮮な野菜、干して乾燥させた魚まで入っているじゃないか!

 あぁ、ボンさん。あなたが神だったのですね!!

「昼飯は買わずに帰れ、ってのはこう言うことか」

「そうみたいですね」

 調理場も食材もあるし、今日のメインは高級肉に決まりだな!

 そんな思いで、箱の中を覗いていると、奥地に小さな箱が見えた。

「こっちは、ルーセントさんから?」

 彼女らしい綺麗な文字で、『諸事情により手渡し出来ず、申し訳ありません』と書かれている。

 最後の方は急いでいたのか、若干走った文字になってはいるが、どうやらギルドマスターに与えられる印が仕上がったらしい。

 小さな木箱をパカリと開くと、宝箱と盾が描かれた銀色のエンブレムが、重く輝いていた。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さくら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

コストカットだ!と追放された王宮道化師は、無数のスキルで冒険者として成り上がる。

あけちともあき
ファンタジー
「宮廷道化師オーギュスト、お前はクビだ」  長い間、マールイ王国に仕え、平和を維持するために尽力してきた道化師オーギュスト。  だが、彼はその活躍を妬んだ大臣ガルフスの陰謀によって職を解かれ、追放されてしまう。  困ったオーギュストは、手っ取り早く金を手に入れて生活を安定させるべく、冒険者になろうとする。  長い道化師生活で身につけた、数々の技術系スキル、知識系スキル、そしてコネクション。  それはどんな難関も突破し、どんな謎も明らかにする。  その活躍は、まさに万能!  死神と呼ばれた凄腕の女戦士を相棒に、オーギュストはあっという間に、冒険者たちの中から頭角を現し、成り上がっていく。  一方、国の要であったオーギュストを失ったマールイ王国。  大臣一派は次々と問題を起こし、あるいは起こる事態に対応ができない。  その方法も、人脈も、全てオーギュストが担当していたのだ。  かくしてマールイ王国は傾き、転げ落ちていく。 目次 連載中 全21話 2021年2月17日 23:39 更新

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

処理中です...