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〈50〉 メイドもついでに占うよー

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 メリアに腕を組まれながら、ふかふかな絨毯を踏みしめる。

 御屋敷の中は、歩く気すら失せるほど豪華だ。

 ポツンと置かれてる壷とか、絵とか、純金っぽい天井の証明とか……。

 あれ1個で、ステーキ何枚食えるんだろうな。

 聞けば教えてくれそうな気もするけど、怖いからいいや……。

「こちらです、お兄さま」

「あっ、うん、ありがとう……」

 恭しくドアをあけてくれる執事さん、格好良すぎるな。

 どんな物を食えば、あの品の良さが出るんだろう……。

 ってか、机の上がお菓子の類で、いっぱい!?

 これって、もしかして!!

「不作法で訳ありません。本日は少数での御茶会を、と思いまして、このような形にさせて頂きましたの」

「少数?」

「はい。本来なら メイドに出来立てを運んで貰うのですが、本日は周囲に漏らせぬ話しもありますので……」

「なるほど」

 つまりは、好き放題食べていい、って事だよな!!

 いや~、嫌々だったけど、今日は来て良かった!

 スイーツが食べ放題とか、最高! マジ王女!!

「我々 庶民はこの形が食べ易いですから、お気になさらず」

 食べ放題にまさる食い方なし!

 食べ放題こそ、至宝!!

「そう言って頂けると幸いですわ。ですが、敬語に戻ってますわよ?」

 おっと、そうだった。

「ごめんね。美味しそうなお菓子ばかりで、テンションあがっちゃって」

「まぁ、御上手ですわね。心行くまで 御堪能下さると幸いですわ」

「ありがとう」

 食べ放題の許可、頂きました!!

 お菓子に目が釘付けになっているリリと彩葉を両脇に座らせて、メリアと向かい合う。

 1人のメイドだけが部屋に残って、ドアがぱたりと占められた。

 残ったのは、路地裏に来てた、あのメイド服の女性だ。

 たしか、アンナって呼ばれてたよな?

「前を失礼します。本日は初夏の物を御用意させて頂きました。御賞味ください」

「あっ、はい。ありがとうございます……」

 ふわりといい香りがする紅茶が注がれてるけど、初夏の物の意味がわからない。

 けどまぁ、高い物なのは、何となくわかるけどさ。

 リリ、彩葉と回って。

 最後に紅茶を注がれたメリアが、ブドウのタルトを小さな口に運んだ。

 視線を釘付けにする綺麗な仕草で唇を湿らせて、ふわりと微笑む。

「私の好きな組み合わせなのです。どうぞ、御召し上がりになって下さい」

「……あっ、うん。ありがとう。いただきます」

 見習うなんて出来ないけど、さすがにがっつけないよな。

 そんな思いで、小さくひとくちだけ。

「!!!!」

 あまっ! うまっ!

 やばっ!!

 これ、やばい!!

 何というか、語彙力が足りないうまさ!!

「いっ、いかがですか? 御口に合いましたでしょうか?」

「あっ、あぁ! すげーうまいよ!」

「そうでしたか。ホッとしました。こちらのクッキーも宜しければ」

「頂きます!!」

 不敬罪が心配だから、ギリギリ許されそうな速度で食べる。

 リリたちも、同じ気持ちなのだろう。

 身に付けたドレスに似合うギリギリの速度で食べながら、大きな瞳を輝かせていた。

 それでも、かなりのペースだけどな。

 けど、わかる!
 わかるぞ、その気持ち!

 うまい物のためなら、命のギリギリまで踏み込めるよな!

--なんて思えたのも、最初の方だけ。

「アンナ。始めますわね」

「承知いたしました」

 恭しく頭を下げたアンナさんが、俺たちに数枚の紙を渡してくれる。

 そこに書いてあったのは、ボンさんたちが持ち帰った情報と、アンナさんたち--第4王女の側近が調べた情報。

 それから、俺の占いに関しての考察。

「安心してください。お兄さまのスキルに関しては、特に注意を払って管理してありますから」

「……そうなんだ。ありがとう」

「いえ、お兄さまのためですから」

 つまりは、守秘義務の塊である王女様から見ても、俺のスキルは隠さなきゃヤバいって事なんだろう。

 お菓子を食べる手を止める気はないが、食べることだけに集中する訳にもいかなくなったな……。

「俺のスキルについて、何かわかった事とかは?」

「……他に例がない。わかった事は、それだけです」

「そっか……」

 王族でもお手上げ、って、それは本当に珍しいレベルなんだろうな。

 うぉっ!? このチョコレート、うますぎねぇ!?

「ですので、私とアンナも占って頂きたく存じます。ダメでしょうか?」

 あれかな? 香りが違う?

 いや、そんなレベルじゃないよな。

 口に入れた瞬間から、喉を通って消えてなくなるまで、全てが違う!

「本来なら、ローラ……、えっと、助けて頂いた時に私の側にいた女性騎士も占って頂きたいのですが、それは後日改めて。本日は私と彼女を……」

「え……?」

 やべぇ、……聞いてなかった。

「ダメでしょうか?」

「……大丈夫ですよ! ええ、もちろん! 大丈夫! うん!!」

 何が?

 なんて聞けなかった。

 いつの間にか、俺が“占い師”のスキルを使うことになっていたらしい。

 アンナさんの手でお宝の山おかしを、テキパキ片付けられていく。

 まだ、一割も食べてないのに……。

「スキルを使って頂く報酬なのですが。お兄さまの“占い”は特殊で、相場もありません。なので、お兄さまの意見も聞きたく存じます」

「報酬?」

「はい。私に叶えられる範囲にはなってしまうのですが……」

 報酬か。

 だったら、

「アンナさんが片付けてるお菓子を報酬に貰えたりしない?」

「え? それは構いませんが、それでよろしいのですか?」

「もちろん」

 だって、スイーツだぜ!?

 お菓子だぜ!?

 これだけあれば、1週間くらいは毎日天国に行けるんだぜ!?

「わかりました。お兄さまの御好意に甘えさて頂きますね」

「って、ことは?」

「商談成立ですわね」

 おおー! 報酬に天国を頂きました!!

 “占い師”のスキルを使うだけなら、ちょっと疲れるだけだし、貰いすぎな気もするけど、相手はお金持ちだからな。

 ちょっとくらい貰ってもいいだろ!

 ってか、思えば、“占い師”が飯を生むなんて、はじめてだな……。

「それじゃぁ、メリア、アンナさん。俺の隣に座って、神に祈るように手を組んでくれる?」

 そうして俺は、“占い師”のスキルで、はじめの仕事をした。
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