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1章 ハブたる郁羊
9話
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女子の宿舎前までくると「じゃ、またね。ありがと」と手を振りながら、笹は去っていった。
彼女の姿が消えたあたりで、背後から別の気配が現れる。
「ありがとな。助かったやっさ」
振り向けば、郁羊だ。ハブからケーユンマジムンの姿へと戻っている。
彼女は笹が履いていたしまパンを口にくわえていた。というか、頬張っていた。少年漫画のワンパク系主人公が骨付き肉にかぶりつくかのように、郁羊はしまパンを噛みちぎり、満足げにムシャムシャと咀嚼していた。
「久しぶりにご馳走にありつけたさ。味も染み渡ってるね、これ」
「う、うまいのか、それ」
「ん? ……やーも、食いたいば?」
「い、いや……」
「本当か? 物欲しげな顔してるけど」
や、やめてくれ郁羊よ。俺の心の奥を探るなかれ。
「そんな顔してないって。人間はそんなもの、食べないからさ」
「そうか。ならいいんだけどさ。萩斗は、まだしばらくここにいるの」
「ああ、まだ旅行初日だからな」
「何日」
「ん、あと……四日かな」
「お、結構まだ、チャンス残ってるね。じゃあさ、またよろしくね」
そう言って俺はポンッと肩を叩かれた。
「え」
チャンスとはどういう意味だ、と聞く間もなく郁羊は蝙蝠へと化けると、夜の帳へと飛び去っていくのだった。
彼女の姿が消えたあたりで、背後から別の気配が現れる。
「ありがとな。助かったやっさ」
振り向けば、郁羊だ。ハブからケーユンマジムンの姿へと戻っている。
彼女は笹が履いていたしまパンを口にくわえていた。というか、頬張っていた。少年漫画のワンパク系主人公が骨付き肉にかぶりつくかのように、郁羊はしまパンを噛みちぎり、満足げにムシャムシャと咀嚼していた。
「久しぶりにご馳走にありつけたさ。味も染み渡ってるね、これ」
「う、うまいのか、それ」
「ん? ……やーも、食いたいば?」
「い、いや……」
「本当か? 物欲しげな顔してるけど」
や、やめてくれ郁羊よ。俺の心の奥を探るなかれ。
「そんな顔してないって。人間はそんなもの、食べないからさ」
「そうか。ならいいんだけどさ。萩斗は、まだしばらくここにいるの」
「ああ、まだ旅行初日だからな」
「何日」
「ん、あと……四日かな」
「お、結構まだ、チャンス残ってるね。じゃあさ、またよろしくね」
そう言って俺はポンッと肩を叩かれた。
「え」
チャンスとはどういう意味だ、と聞く間もなく郁羊は蝙蝠へと化けると、夜の帳へと飛び去っていくのだった。
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