9 / 10
1章 ハブたる郁羊
8話
しおりを挟む
たいそうな出来ごとの余韻がまだ幾分、体内を熱くさせていた。
笹も、おそらくは同じではないか。彼女のエアリーな髪形は先ほどの乱れによりしなっていて、ほんのりと色気がある。
昂りを落ちつかせるように、ふたりして、とぼとぼと時間をかけ宿舎への帰路を辿った。まったりと言葉も交わしながら。
「ふう、大変な目に合っちゃったね」
「ああ。あれだな、あの、もっと早めにハブひっ捕まえてりゃよかったな」
「うん……でも、萩斗くんのこと、素敵だなって思ったよ」
「そ、そうか。どうして」
ハブから助けたからだろうか。
すべては、実のところは、こちらから仕掛けたことなのだけど。
「わたしに、手を出してこなかったからね」
「手を出す?」
「私が、あんな状態になってもさ。……だってね、男子ってすぐに、手を出してこようとするでしょ」
「えっ」
「わたしにも、隙があるのかな。ちょっと仲良くなれたなって思ったら、そういう関係になろうとするっていうか……」
「手を……出されているのか?」
「う、うん。……あ、でも、大事な部分は守ってるよ」
「大事な部分?」
「……ハブは、カウントに入らないよね?」
伏し目がちに、照れくさそうに問いかけてくる笹に俺は、なんともまあドギマギしてしまう。「そりゃ、な、なあ。まあ、ハブだしな」とか返事に窮して、声も震えてしまって。
というか、おいっ、男子諸君!
我が天使になんてことをしやがる。やめてやれっ。
俺は心の中で一喝する。
誰が、どんな風に手を出し、どこまでいったんだ。気になる。……気になるけど、聞きづらい話でもあるわけで。
「でも、わたしがあんな隙だらけの恥ずかしい状態になっても、萩斗くんは他の男子みたいな、そんな素振りは見せなかったからさ。素敵だなって」
「いや……そりゃ、そうだろ」
とか言いつつ、理性が崩れそうな瞬間は度々あったけれども。
「女子にもなんか、疎まれているしね。あざとい女に見えるんだって。芹南ちゃんなんて、ビッチ呼ばわりしてくるでしょ」
「城爾奈の言うことなんて、聞き流しとけよ」
笹にそう返しながら「エンドレス童貞」と称された自分自身にも、言い聞かすわけだ。ってか俺の見立てでは、城爾奈の方こそビッチである。
「やっぱり安心して話せるのは、萩斗くんと一舞くんくらいだよ」
一舞とは見た目も仕草もまるで女の子のような、男子である。男子用の制服を着ていなければもはや、女子としか思えない。柔らかいが微かにハスキーな声が、あえて挙げれば残された男子らしさで、とはいえハスキーな声の女子なんてのも多々いるわけで。
笹の言うように、思い返してみれば彼女は男子にちょっかいをかけられ相手している様子ばかりで、彼女が自ら話しかけるのは俺や一舞だけかもしれない。
笹が俺に声をかけてくれるのは、彼女の優しさからくるものだと思っていた。一人でばかりいる俺への気遣いではないかと。けれども笹は純粋に、俺と話したがっていたのか。
マジで?
ならば、有難いことだ。
「だからね」
と笹はちらりと目を合わせ、はにかんだ。
「これからもよろしくね、萩斗くん」
安心して話せる、というのは男として見られていない、ということかもしれない。
でも、構わないのだ。笹の天使の頬笑みを向けられるのであれば。
笹も、おそらくは同じではないか。彼女のエアリーな髪形は先ほどの乱れによりしなっていて、ほんのりと色気がある。
昂りを落ちつかせるように、ふたりして、とぼとぼと時間をかけ宿舎への帰路を辿った。まったりと言葉も交わしながら。
「ふう、大変な目に合っちゃったね」
「ああ。あれだな、あの、もっと早めにハブひっ捕まえてりゃよかったな」
「うん……でも、萩斗くんのこと、素敵だなって思ったよ」
「そ、そうか。どうして」
ハブから助けたからだろうか。
すべては、実のところは、こちらから仕掛けたことなのだけど。
「わたしに、手を出してこなかったからね」
「手を出す?」
「私が、あんな状態になってもさ。……だってね、男子ってすぐに、手を出してこようとするでしょ」
「えっ」
「わたしにも、隙があるのかな。ちょっと仲良くなれたなって思ったら、そういう関係になろうとするっていうか……」
「手を……出されているのか?」
「う、うん。……あ、でも、大事な部分は守ってるよ」
「大事な部分?」
「……ハブは、カウントに入らないよね?」
伏し目がちに、照れくさそうに問いかけてくる笹に俺は、なんともまあドギマギしてしまう。「そりゃ、な、なあ。まあ、ハブだしな」とか返事に窮して、声も震えてしまって。
というか、おいっ、男子諸君!
我が天使になんてことをしやがる。やめてやれっ。
俺は心の中で一喝する。
誰が、どんな風に手を出し、どこまでいったんだ。気になる。……気になるけど、聞きづらい話でもあるわけで。
「でも、わたしがあんな隙だらけの恥ずかしい状態になっても、萩斗くんは他の男子みたいな、そんな素振りは見せなかったからさ。素敵だなって」
「いや……そりゃ、そうだろ」
とか言いつつ、理性が崩れそうな瞬間は度々あったけれども。
「女子にもなんか、疎まれているしね。あざとい女に見えるんだって。芹南ちゃんなんて、ビッチ呼ばわりしてくるでしょ」
「城爾奈の言うことなんて、聞き流しとけよ」
笹にそう返しながら「エンドレス童貞」と称された自分自身にも、言い聞かすわけだ。ってか俺の見立てでは、城爾奈の方こそビッチである。
「やっぱり安心して話せるのは、萩斗くんと一舞くんくらいだよ」
一舞とは見た目も仕草もまるで女の子のような、男子である。男子用の制服を着ていなければもはや、女子としか思えない。柔らかいが微かにハスキーな声が、あえて挙げれば残された男子らしさで、とはいえハスキーな声の女子なんてのも多々いるわけで。
笹の言うように、思い返してみれば彼女は男子にちょっかいをかけられ相手している様子ばかりで、彼女が自ら話しかけるのは俺や一舞だけかもしれない。
笹が俺に声をかけてくれるのは、彼女の優しさからくるものだと思っていた。一人でばかりいる俺への気遣いではないかと。けれども笹は純粋に、俺と話したがっていたのか。
マジで?
ならば、有難いことだ。
「だからね」
と笹はちらりと目を合わせ、はにかんだ。
「これからもよろしくね、萩斗くん」
安心して話せる、というのは男として見られていない、ということかもしれない。
でも、構わないのだ。笹の天使の頬笑みを向けられるのであれば。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。
エース皇命
青春
高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。
そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。
最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。
陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。
以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。
※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。
※表紙にはAI生成画像を使用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる