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第1話 魅了
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アイラは癒しの力が発現した十三歳あたりから異常にモテはじめた。
異性だけでなく、時には同性からも恋慕のような感情を向けられた。
ような、というのはアイラにとってそれは「恋」されているように感じなかったからだ。
どちらかというと、崇拝。それも非常に盲目的な。
アイラと一言二言しか喋ったことのないようなクラスメイトが、いつの間にか「アイラは素晴らしい」と褒めてくる。
婚約者がいる男性が「僕はアイラを愛してしまった」といって婚約破棄をする。アイラは何もされていないのに、突然「アイラを虐めたと聴いたぞ!?」などといって婚約破棄をする。
アイラが私は何もされていないと主張しても、「あんな女(男)を庇わなくていい」と慈しむような目を向けられる。
口ではアイラを愛しているというのに、耳ではアイラの言葉はまるで聞かない。
アイラの意思とは関係ないところで、アイラを「守ろう」とするのだ。頓珍漢な勘違いや思い込みと共に。
それは聖女としてこの学校に来てからもそうだった。
アイラのまわりで何組、婚約破棄をしただろう。
そして、ビアンカの婚約者もまた、アイラに対して「崇拝」に近い視線を向けてきていた人のひとり。
そういった過去を思い出したところで、ぽたり、と涙が溢れた。
魅了、は法律でも禁忌とされている精神支配系魔法の一つ。
それを使っていたというのであればなるほど、いままでの周りの異常さも納得がいく。
悲しかった。
好意を向けられるのは本意ではなかったから、私のせいではない、私が悪いのではないと言い聞かせて抑えてきた孤独感と罪悪感が、一気に吹き出した。
(今まで泣かせてきた令嬢令息たちは、私の死を望むだろうか)
魅了は禁忌。重いものは死罪になると聴いたことがある。
ぼんやりとそんなことを考えた。
(うん。やっぱり死罪かな。だって、魅了かけた相手に王子様がいるんだもの)
アイラにとって幸いなのは、自分が天涯孤独な身の上のことだ。
三年ほど前に両親は事故で亡くなった。
教会に引き取られたのち国から招かれての入学だったから、生活費も学費もすべて国が出してくれているけれど、それも含めてきっと死罪だ。
だって、癒しの力の発現はともかくとして、きっと私は魅了の魔法でこの地位、この生活を手に入れたんだろうから。
アイラはそう考える。
「泣いても、あなたの罪は軽くなりませんよ。先ほども言いましたが、私は魔封じの加護があるので、精神支配系の魔法は効きませんから」
冷たい声が、いつの間にかへたり込んでいたアイラの上から降ってくる。
こんな声をかけられれることをしたんだな、と思うと、泣くなんてみっともないと思いながらも、アイラの涙は止まらなかった。
「これ、……魅了、は、使えなく、できないのかな…」
「はい?」
ビアンカに向けたものではない、ぽつりと溢れたアイラの本音に、ビアンカは間の抜けた声を出してから眉を寄せた。
「封じますよ。当たり前でしょう」
「!」
思わず顔を上げたアイラに、ビアンカは眉間の皺を深くした。
(なんで嬉しそうなのかしら)
「とりあえず、抵抗するのはよしてくださいね」
「抵抗なんて致しません。それだけのことを、私はしでかしていたようですから」
(しでかしていたよう?先ほどから、何をいっているのでしょうか、この子)
アイラの回答にさらにビアンカは眉を寄せるが、横に控えていた執事に指示を出し、魔封じの腕輪をはめる。
はめると同時にまるで雷に撃たれたかのようにアイラの体が跳ね、そしてそのまま白目を向いて倒れた。
「な、セバス!あなた何をしたのです!?」
「何もしておりません!魔封じをはめただけでございます!」
「じゃあこの子のこの反応はいったい…、はっ!彼女は生きていますか!?」
執事は慌てて脈を確かめる。
気を失っているだけで脈は問題ないようだったが、魔封じの腕輪は砕けている。
(どういうことなのかしら)
アイラにはめようとした腕輪は、かなり効果の高いもののはずで、ちょっと反発されたくらいでは砕けるようなものではない。
それに、彼女はアイラの発言や反応も気になっていた。
(この子、まるで自分の意思ではなかったような言い方をしていましたね)
陛下に言われて、彼女を捕らえるためにこの生徒会室に呼んだ。それは間違いないのだが、ビアンカは喉の奥で小さく「うーん」と唸った。
「セバス、私の屋敷に彼女を運んでくれますか」
「そんなことをしてお嬢様は罪に問われませんか」
「陛下には、捕らえる方法は任せると言われていますから」
セバスに抱き抱えられて馬車に乗せられた少女を見る。ほおに残った涙の跡を見て、ビアンカはまた少しだけ眉を寄せた。
異性だけでなく、時には同性からも恋慕のような感情を向けられた。
ような、というのはアイラにとってそれは「恋」されているように感じなかったからだ。
どちらかというと、崇拝。それも非常に盲目的な。
アイラと一言二言しか喋ったことのないようなクラスメイトが、いつの間にか「アイラは素晴らしい」と褒めてくる。
婚約者がいる男性が「僕はアイラを愛してしまった」といって婚約破棄をする。アイラは何もされていないのに、突然「アイラを虐めたと聴いたぞ!?」などといって婚約破棄をする。
アイラが私は何もされていないと主張しても、「あんな女(男)を庇わなくていい」と慈しむような目を向けられる。
口ではアイラを愛しているというのに、耳ではアイラの言葉はまるで聞かない。
アイラの意思とは関係ないところで、アイラを「守ろう」とするのだ。頓珍漢な勘違いや思い込みと共に。
それは聖女としてこの学校に来てからもそうだった。
アイラのまわりで何組、婚約破棄をしただろう。
そして、ビアンカの婚約者もまた、アイラに対して「崇拝」に近い視線を向けてきていた人のひとり。
そういった過去を思い出したところで、ぽたり、と涙が溢れた。
魅了、は法律でも禁忌とされている精神支配系魔法の一つ。
それを使っていたというのであればなるほど、いままでの周りの異常さも納得がいく。
悲しかった。
好意を向けられるのは本意ではなかったから、私のせいではない、私が悪いのではないと言い聞かせて抑えてきた孤独感と罪悪感が、一気に吹き出した。
(今まで泣かせてきた令嬢令息たちは、私の死を望むだろうか)
魅了は禁忌。重いものは死罪になると聴いたことがある。
ぼんやりとそんなことを考えた。
(うん。やっぱり死罪かな。だって、魅了かけた相手に王子様がいるんだもの)
アイラにとって幸いなのは、自分が天涯孤独な身の上のことだ。
三年ほど前に両親は事故で亡くなった。
教会に引き取られたのち国から招かれての入学だったから、生活費も学費もすべて国が出してくれているけれど、それも含めてきっと死罪だ。
だって、癒しの力の発現はともかくとして、きっと私は魅了の魔法でこの地位、この生活を手に入れたんだろうから。
アイラはそう考える。
「泣いても、あなたの罪は軽くなりませんよ。先ほども言いましたが、私は魔封じの加護があるので、精神支配系の魔法は効きませんから」
冷たい声が、いつの間にかへたり込んでいたアイラの上から降ってくる。
こんな声をかけられれることをしたんだな、と思うと、泣くなんてみっともないと思いながらも、アイラの涙は止まらなかった。
「これ、……魅了、は、使えなく、できないのかな…」
「はい?」
ビアンカに向けたものではない、ぽつりと溢れたアイラの本音に、ビアンカは間の抜けた声を出してから眉を寄せた。
「封じますよ。当たり前でしょう」
「!」
思わず顔を上げたアイラに、ビアンカは眉間の皺を深くした。
(なんで嬉しそうなのかしら)
「とりあえず、抵抗するのはよしてくださいね」
「抵抗なんて致しません。それだけのことを、私はしでかしていたようですから」
(しでかしていたよう?先ほどから、何をいっているのでしょうか、この子)
アイラの回答にさらにビアンカは眉を寄せるが、横に控えていた執事に指示を出し、魔封じの腕輪をはめる。
はめると同時にまるで雷に撃たれたかのようにアイラの体が跳ね、そしてそのまま白目を向いて倒れた。
「な、セバス!あなた何をしたのです!?」
「何もしておりません!魔封じをはめただけでございます!」
「じゃあこの子のこの反応はいったい…、はっ!彼女は生きていますか!?」
執事は慌てて脈を確かめる。
気を失っているだけで脈は問題ないようだったが、魔封じの腕輪は砕けている。
(どういうことなのかしら)
アイラにはめようとした腕輪は、かなり効果の高いもののはずで、ちょっと反発されたくらいでは砕けるようなものではない。
それに、彼女はアイラの発言や反応も気になっていた。
(この子、まるで自分の意思ではなかったような言い方をしていましたね)
陛下に言われて、彼女を捕らえるためにこの生徒会室に呼んだ。それは間違いないのだが、ビアンカは喉の奥で小さく「うーん」と唸った。
「セバス、私の屋敷に彼女を運んでくれますか」
「そんなことをしてお嬢様は罪に問われませんか」
「陛下には、捕らえる方法は任せると言われていますから」
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