愛情不信聖女と魔術ばか王子のまったり研究ライフ

ゆるゆる堂

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第18話 未来を願ってほしい

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「アイラ、大丈夫ですか?」

 その大丈夫、には、体調だけじゃなくて気持ちの面も入っているのがすぐにわかって、アイラは曖昧に笑った。

「なんで私、生まれてきたんでしょうか」
「え?」
「…私、癒し手として、生きていきたいとずっと思っていたんですけれど」

 そして、そのための強い力があるのに、魅了が夢の邪魔をする。歪だな、とアイラは自分を思う。

「誰かを助けることが、誰かの人生を狂わせることになるって、私ってなんのために、こんな能力をもって生まれてきたんだろうって」

 助けることはできても、魅了にかかっている人は少なくとも1週間は魔封じの部屋で監禁されることになる。大規模な治癒魔法を野外で使えば、何百人という範囲の人を監禁することになるかもしれない。
 たまたまその場に居合わせた人、通りすがった人まで全て監禁することはできないし、その人が魅了にかかっているなら、その人の人生はそこからねじれていくかもしれない。

「私という変な存在を生み出したから、女神様は、この世界にごめんなさい、って誤ってるんじゃないでしょうか」

 自嘲気味に笑ったアイラに、ビアンカはうまく言葉を紡げなかった。

「あのね、アイラ」

 ビアンカとアイラの間に静かな時間が生まれたタイミングで、自分の世界に入っていたはずのアルトに突然声をかけられて、アイラはびっくりとした顔をアルトへ向ける。

「君が癒し手として生きたいと言ってくれるなら、僕はそれを後押しするよ」
「え?」
「だって、すごいんだもん。君の魔力量も、魔法におけるセンスも。どれくらいの規模でさっきの結界と治癒魔法組み合わせたの使えるかはわからないけれど、あれだけでも、魅了魔法のリスクを負うメリットが十分にある。
僕は君が積極的に魅了をかけたがっているとは、どうしても思えないから、そこの証明は何がなんでもしてみせる。魅了がかかる人を最低限に抑える方法も考えよう。陛下だって説得できる自信があるよ。
だからさ、アイラが魔法を使える、そんな基盤を作ろうよ。君の魔法なら救える人生が増えるよ。それに、君の魔法のセンスはこれからの魔法学に絶対役に立つ。
魔力量の問題はあるけれど、ちゃんと理論を組み立てられれば、君の魔法を後世に残せる。そうしたらもっと、もっとたくさんの人の人生が未来へ繋がるかもしれない。
ねえ。願って、アイラ。君が願うなら、僕が全力でその夢を叶える支えになるよ」

 まっすぐ向けられたその瞳から、アイラは目を逸らすことが出来なかった。

「で、でも、私は…たくさんの人の人生を歪めました。そんな私が」
「自分の夢を、幸せを願っていいのか、って?」

 アルトに言葉をつなげられて、一瞬息を飲む。そうだ。幸せになる資格が自分にあるのか。

「ねえ、これはねアイラ。君がこれからの幸せや夢を願うことが、これからを生きる誰かの幸せや夢を繋ぐかもしれないって、話なんだ」
「私が願うことが…?」
「そう。…まあ全ては、神殿についてからになるけどね」

 アルトはそれだけ言うとニコッと笑って、「じゃあもう少し考え事するね」とまた窓の外へと視線を移した。
 私が幸せを、夢を願うことが、誰かの夢を繋げるかもしれない。
 アイラは、アルトの言葉をぎゅう、と胸のなかで繰り返した。



 
 それから2時間ほどで、神殿の前に到着した。
 到着予定から遅れたことの詫び、怪我人がいること、それを治療したのがアイラだということ、魅了にかかっている可能性が高いということ、それらをアルトが馬車から降りて説明をする。
 第三王子という身分の者から直接伝えることで、神殿側のアイラへの不信感のようなものを本人に見せないような配慮だというのは、馬車の中にいるアイラにもわかった。

「緊張していますね」

 下を向いたままのアイラに、ビアンカがゆっくりとそう声をかけた。アイラはひとつ頷きを返す。
 なんとなく、事態が大きく動く気がして、それが少し怖い気もして。
 膝の上で組んだ手にぎゅっと力が入った。
 ちょうど同じタイミングで、アルトが馬車の中に顔を出す。

「怪我人…いや、怪我はもう治ってるからなんだろ、意識不明者?魅了魔法にかかった男?…まあ、なんでもいいか。降ろすって。ビアンカ、ゴメンだけどついて行って、彼らの療養する部屋に魔封じかけてもらってもいい?あとミィもついていって。彼らが目を覚ました後の様子の観察をよろしく」

 彼らは魅了にかかっている。
 その魔法が解けるまでは、例に漏れず魔封じの部屋で監禁されることとなる。といっても、彼らはアイラを認識していない。
 アイラに治してもらったという意識がない状態でかけられた魅了がどう発動するのかというのは、ちゃんと観察しないとね!とアルトが楽しそうに言うものだから、アイラとビアンカ、ミィすら苦笑を返すしか無かった。
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