44 / 196
特別な食事4
しおりを挟む
坂部は一通り見回して、そしてひと言「これは俺のための食事会なのか」と訊ねた。
「あたしは大げさすぎると謂ってやった。いつものように時間になればお腹の空いた人だけ来れば良いのにと言ったのに、どうやら裕介がお昼の家族会議で此の夕食時にみんなを集めたかったのよ」
最初はみんなは反対したけれど、離れのおばあちゃんにお伺いを立てた。その祖母のひと声で決まったようだ。
「でもその決めた人が真っ先にひと言も俺の事を聞かずに行っちまったのはどう謂うわけなの」
「あなたを一目見て安心したからよ」
「あんな遠い処から見て一目で解る祖母は千里眼か」
「解るわけないでしょう。事前にあなたに関する情報を吹き込んでおかないと」
「そうだろうなあ、それで誰が吹き込んだ。俺を知っているのは高村だけだろう」
「あと二人居るでしょうあの大学に」
「和久井と小石川か、でもあの二人は俺の事を何も知らないだろう、少なくとも俺の実家の家族に比べたら」
「それがそうじゃないのよ。あなたの両親や家族には気が付かなかった事を知っていたわよ」
「それどういうこと」
「おばあちゃんが京都にある身辺調査事務所から届いた調査結果を拝見して、あとは照らし合わせるために本人を見ただけなの」
「照合するだけでこんな大層な夕食を催すのか」
「裕介のたっての頼みでもあるけれど、矢張り祖母のひと言でしょう」
坂部は美紗和さんの肩越しに裕介を見るが、彼は次々とテーブルの料理を平らげて、ワインまで飲んでいる。
「彼奴《あいつ》は未成年なのに酒はいいのか」
この宴会ではそんなことは謂ってられない。それでも何しろ生まれて初めて目にする物だけに矢張り抵抗感はある。
「あなただってそうだけれどで、ももうあと半年で二十歳なんでしょう。そんなウーロン茶ばかり飲んでいないでこのワイン美味しいわよ」
とワイングラスを持ち上げて、美紗和は一口飲んだ。
「あたしは大げさすぎると謂ってやった。いつものように時間になればお腹の空いた人だけ来れば良いのにと言ったのに、どうやら裕介がお昼の家族会議で此の夕食時にみんなを集めたかったのよ」
最初はみんなは反対したけれど、離れのおばあちゃんにお伺いを立てた。その祖母のひと声で決まったようだ。
「でもその決めた人が真っ先にひと言も俺の事を聞かずに行っちまったのはどう謂うわけなの」
「あなたを一目見て安心したからよ」
「あんな遠い処から見て一目で解る祖母は千里眼か」
「解るわけないでしょう。事前にあなたに関する情報を吹き込んでおかないと」
「そうだろうなあ、それで誰が吹き込んだ。俺を知っているのは高村だけだろう」
「あと二人居るでしょうあの大学に」
「和久井と小石川か、でもあの二人は俺の事を何も知らないだろう、少なくとも俺の実家の家族に比べたら」
「それがそうじゃないのよ。あなたの両親や家族には気が付かなかった事を知っていたわよ」
「それどういうこと」
「おばあちゃんが京都にある身辺調査事務所から届いた調査結果を拝見して、あとは照らし合わせるために本人を見ただけなの」
「照合するだけでこんな大層な夕食を催すのか」
「裕介のたっての頼みでもあるけれど、矢張り祖母のひと言でしょう」
坂部は美紗和さんの肩越しに裕介を見るが、彼は次々とテーブルの料理を平らげて、ワインまで飲んでいる。
「彼奴《あいつ》は未成年なのに酒はいいのか」
この宴会ではそんなことは謂ってられない。それでも何しろ生まれて初めて目にする物だけに矢張り抵抗感はある。
「あなただってそうだけれどで、ももうあと半年で二十歳なんでしょう。そんなウーロン茶ばかり飲んでいないでこのワイン美味しいわよ」
とワイングラスを持ち上げて、美紗和は一口飲んだ。
10
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
灰かぶりの姉
吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。
「今日からあなたのお父さんと妹だよ」
そう言われたあの日から…。
* * *
『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。
国枝 那月×野口 航平の過去編です。
27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?
藍沢咲良
恋愛
一色唯(Ishiki Yui )、最近ちょっと苛々しがちの27歳。
結婚適齢期だなんて言葉、誰が作った?彼氏がいなきゃ寂しい女確定なの?
もう、みんな、うるさい!
私は私。好きに生きさせてよね。
この世のしがらみというものは、20代後半女子であっても放っておいてはくれないものだ。
彼氏なんていなくても。結婚なんてしてなくても。楽しければいいじゃない。仕事が楽しくて趣味も充実してればそれで私の人生は満足だった。
私の人生に彩りをくれる、その人。
その人に、私はどうやら巡り合わないといけないらしい。
⭐︎素敵な表紙は仲良しの漫画家さんに描いて頂きました。著作権保護の為、無断転載はご遠慮ください。
⭐︎この作品はエブリスタでも投稿しています。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる