振り向けば君がいた

和之

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第七話

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  第七話

 ちょっとこの仕事に慣れた頃に希美子と深山さんが睦夫さんと雅美ちゃん、陽子ちゃんを誘って休日の夕方から野村の歓迎会を催してくれた。
 深山さんだけが得意先の用件を済ませてから来る事になっている。五人は一緒のバスで三条木屋町の居酒屋へ行った。 
 白井くんも誘う予定だったが彼は十八で酒も弱く、音楽に酒は無用と云うのも彼の持論だった。野村も未成年だが彼は限りなく二十歳に近い未成年で実際後少しだった。だから歓迎会と成人式がごっちゃになっている。
 店は陽がまだ浅いのか客も疎らだった。まず野村がビールの味見で始まった。一同注目の中で野村が一口飲んで大丈夫となってから乾杯になった。先に始めてくれと云う深山の伝言で五人は飲み食いを始めて一息ついたところで、この場に居合わせない深山の話から始まる。
「希美ちゃんは深山さんのどこが気に入ったん」
 先ずはこのテーマについて、陽子の兄貴分の雅美が切り出した。
「今更何を急に言いだすんや」と睦夫さんが遮った。
 別に気にしてないからと睦夫さんの配慮を断ってから。
「そう言われても困るけど自分の描いてるタイプ、性格に近いから」と希美子は言いだした。
「それって愛情はどうなん、好みのタイプでもどうしても一緒になれないって事あるでしょう」
 雅美がまた突っ込んで来る。此の二人は別に仲が悪い訳じゃなくて、雅美は理屈っぽいのだ。陽子が来るまではそんな彼女に希美子は良き話し相手だった。
「それは最初からタイプでなかったんじゃない。だから愛情が持てる性格ってあるでしょう」
「フーン、深山さんがそうなのか」
「でもまだ解らないの、でも悪い人じゃないから」
 宴が始まってから主に喋ってるのはこの二人だ。
「根っから悪い人なんていないんじゃないの」
「雅美ちゃんやけにからむんやなぁ」
 からかってる雅美は口は悪いが根がないから、睦夫も程ほどにしときと遠回しに言っている。
「それよりビールの味はどうや?」
「コカコーラーから砂糖を抜いて渋みを入れた様なもんやなあ」
「まだ子供みたいな事云ってるんやなぁ」
 雅美がお姉さんぶって言った。
「みんなええ歳してるからなあ」
「睦夫さんええ歳ってなによ、野村くんと二つか三つしか違わへん」
「雅美ちゃんは四つ違うんちゃう」
「厳密には三つ半やそれに彼ももうすぐ二十歳やないの、で仕事はどう慣れた、向かいのお姉さんに指導してもらってんでしょう」
「ちょっと雅美ちゃんお姉さんはないでしょう」
  彼女達はそうよと言いながらも、呑むより食べる方が主体だった。
「ねぇ陽子ちゃん食べてないでなんか言ってよ」
 希美子は陽子が野村の事を聞きたがっていると今度は野村に話しを向けた。
「最近はこの人、あたしにあなたの事ばかり訊くのよ昨日もそうなんだから」
「別に頼んだ訳じゃないよ新しい人が来ればどんな人か知りたい、好奇心の一種だよ」
 陽子は野村の手前ちょっとムキになって否定した。
「そうかしら新人さんが来ても関心なければ知らん顔してるくせに」
「そんな事ないよね、野村くんと一緒にこないだギターをちょっと聴いたよね」
「陽子はあたしが練習してるときに勝手によっただけじゃん」
 と雅美は片棒を担がされたくないと妹分を突き放した。
「そんなことはない!」と今度は陽子か意地になった。
「あたしも一度雅美ちゃんのギター聴いてみたい」
 とムキになる陽子に希美子がさりげなく収まる様に喋り掛ける。
「希美ちゃんは深山さんの言う事を聞いていたらええんちゃうの」
 そこで睦夫さんが適当な言葉で収めに乗り出したが「希美ちゃんはそんな一方的に言う人じゃない」と今度は急に野村が騒ぎ立てて希美子を援護するとそれには睦夫さんも驚いた。
「何もそんなつもりで言うたんちゃうがなぁ」
「そんなことはない!」と言った後で野村も困惑して来る。
 引っ込みがつかなくなった睦夫も困りはてた。いつもと違う様子に希美子は戸惑った。その沈黙の中で、入り口で店員とやりとりする深山の姿が見えて、みんなの関心がやって来る深山に移った。
 カウンターは一人客ばかりで座敷もまだ半分空いている。だから深山も店員の案内を待たずに簡単に見つけられた。
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