振り向けば君がいた

和之

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第二十七話-2

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 実は先生に退職を願い出た時に、中学からの友人で自分と同じで絵心が有り、漫画家志望で頑張っている中本を紹介した。だから深山さんは先生から野村くんの荷物を送ったついでに、中本くんとの面接を一任されてもいた。
 希美子との煮え切らない過去に一段落付けると深山は話題を切り替えた。
「ところで先生から聴いた中本くんと云う子は君の近所に居るんか」 
 友禅に関心が有る子のなら連れて来て欲しいと深山は頼まれている。
「関心どころか九分通り決めたようです」
 それで今日は会う予定になっていると言った。
「じゃあ先にそっちへ寄っていくか。荷物を先に置いて仕舞えば帰り掛けだと一人になるからそれじゃぼくは初対面になるから野村くんと一緒の方が良いだろう」
 そうですねそれじゃあと話が付き、途中から行き先を変更する。
「居るかなあ」
「大丈夫、今日は一日中居ます、と云うより毎日暇な男です」
「大学も行かずに家に居れば両親は黙ってるわけないやろう」 
「不定期のバイトですから、だから今日が親に言われたリミットなんです」
「そうか、で、どう云う友達なんや」
 中学一年の時の同級生で、クラス替えが有ってもずっと付き合って、そのまま高校へ進学した。学校からの斡旋で別々の会社へ就職したが、やはり半年ぐらいで辞めてしまい、漫画に没等してます。が、一向に芽が出ないから家に籠もってるよりも、一度世間に出た方が創作の肥やしになると説得して今日に到っている。
「だから絵はぼくより巧いですよ」
 何より学校から行った植物園での写生大会では、彼と同じ場所で描いたのに、中本は金賞でぼくは銀ですからね。云っときますが金賞は全校生千二百人の中からたったひとりで、ぼくの取った銀賞は三人も居るんですよ。後で美術の先生からこっそり聴かされた話では、その年は銀賞は対象者なしだったそうです。それでは生徒の意欲に影響するからと校長に言われて三名を選出したそうです。
 ホーと深山さんは感心している。
「彼はその時はどんな絵を描いたんだ」
「場所は植物園ですけれど季節が七月ですからめぼしい花は咲いてませんから森の風景画で水彩画なんですけど、それを上から塗り重ねて油絵のようになるところは中本と一緒で、ぼくはかなり正確に描いたけれど中本のは不正確なんですよ。だから枝や木がこんな形や色をするかと言ってやったが意に関せず思い通りに自由奔放に筆を運んでいたんです」
「工房の二階に居る橋場さんもそんなところがあるんやなあ。けれどあの人は着物には正確に描かはる。それが忠実すぎて却って幽玄の世界へ引き込ませるんや、いつか白井くんが冗談っぽく橋場さんの事を『あれは人間国宝でっせ』て云ってたなあ」
 今は草稿に専念してる先生より、素描きに関しては上だと柏木さんがご指名した人だ。深山さんも、希美ちゃんが居なければ橋場さんから、結構いい影響が受けられたかも知れない。いや人のせいにしたらあかんこれは母親の家訓だった。
 深山さんが橋場さんを批評してる間に中本の家に着いた。
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