上 下
46 / 195
第3章 (2)ユウside

2-1

しおりを挟む

好きだった女の子と再会した。

その子は元々、同じ町に住んでいた五つ年下の女の子。
初めて会ったのは彼女が13歳、僕が18歳の時。
彼女は病弱な母親に代わって働きたいと、僕が初めて就職した飲食店にやって来た。

お母さん想いの優しい彼女。
特別に美人ではないけど、何事にも一生懸命で見ていると何だか僕の方が元気をもらった。
就職したてで自信がなかった僕は、彼女の笑顔にいつも癒されて……。
最初は妹のように可愛がっていた彼女を、次第に僕は好きになっていったんだ。


……けれど。彼女は17歳の時に、突然町からいなくなった。
母親が亡くなり、彼女はずっと疎遠だった祖父に引き取られたのだと……。僕は暫くしてから知った。


後悔した。
何故もっと早くに、気持ちを伝えなかったのだと……。
職場に行けば毎日の様に会えるという余裕から、僕は当たり前の日々に満足してしまっていた。
彼女の笑顔が目の前から消えてしまう日が来るなんて、考えもしていなかった。


……アカリ。
アカリには、もう会えないのか?

いつも心の何処かで彼女を探していた。
そんな生活が1年以上続いたある日。
勤めていた飲食店で、新しく始める職場の手伝いをしてほしいと言われ……。
僕はこの港街のパン屋さんに移動が決まった。


でも、何も変わらない。
ただ普通に過ぎて行く毎日。
退屈な日々。

……そんな中。
ついに僕は、君を見付けた。
しかも、僕の勤めるパン屋さんで彼女が働く事になっていた。

また一緒に働ける。
奇跡としか思えない再会に、僕の胸は高鳴った。
しおりを挟む

処理中です...