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第2章(3)ヒナタside
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しおりを挟むそして、ツバサが4歳になった時。
夜中、誰かが話している声がして目を覚ますと……。
『うん。……うん』
一緒に子供部屋で寝ていた筈のツバサがベッドから降りて、まるで誰かの話を聞いているように頷いていた。
その気配には同じ部屋で寝ていたヒカルも気付いて、暫く二人で様子を伺っていると……。
『ん、わかった。ばいば~い』
ツバサがそう言って、誰かに手を振っていたのだ。
さすがに驚いて、電気を付けて「誰と話してたの?」って問い掛けると……。
『ひいじいちゃんだよ』
と言って、ツバサは両親が眠る寝室へ駆け出した。
"まさか!"って思った。
ヒカルと二人で私達も両親の元へ駆けつけると、ツバサが母に向かってこう言っていた。
『あのね、ひいじいちゃんもうばいばいだって。
みんな、げんきでねっていってたよ』
……その直後だった。
ずっと床に伏せっていた私達のひい祖父さんにあたるアルバート様が亡くなったと、電話が掛かってきたのは……。
私達の父ヴァロンの一族には、希血と呼ばれる特殊な血液型で産まれてくる子供がいるらしい。
その希血の者は不思議な能力を持っている可能性があって、ツバサはその血を受け継いでいた。
父もその不思議な能力を持っていた。
が、父の能力は相手と触れ合った時にのみ発動するものだったから、本人が慣れ、気を付けていればさほど影響をもたらさなかったとか。
でも。ツバサが持っていた能力は父よりも強力で、幼くして目覚めてしまったせいで本人は上手く抑える事が出来ずにいた。
ひい祖父さんの葬儀にも、ツバサは参加出来なかった。
私達では想像もつかない、聞きたくない声が聞こえてしまう苦しみ。見たくないものまで見えてしまう辛さ。
うずくまり、耳を塞ぎ、目をぎゅっと閉じて耐えるツバサの姿を観察して、いち早く解決方法を見付けたのは……。やはり、同じ希血の父だった。
希血を持つ者は、本来漆黒の容姿を受け継がないーー。
それは、希血を持つ者の法則のようなもの。
いくつかある法則の中で、ツバサに異なっていた虹彩異色症の黒い瞳。
それが原因ではないか?と、眼帯で見えなくなるよう塞ぐと、ツバサの能力を封じられる事が分かった。
それからツバサは徐々に外に出たり、人混みに行ったり、普通の子供と同じように遊べるようになった。
能力の事で困った時は父のアドバイスの元、年齢を重ねる度に上手く付き合えるようになって、私達家族も一安心。
ツバサにとって父の存在は、きっと私達よりも必要で心強かったに違いない。
だから、父が亡くなった時。
誰よりも、母よりも心の拠り所を失くしたのは、本当はツバサ。
その証拠に、あの子は夢の配達人を辞める時もレノアちゃんにも父の死を口にしなかった。
それは、口にしたら父がいなくなってしまった事を認めてしまう事になるから……。
あの子は父が亡くなってから一度も泣かなかったし、弱音を吐く事もなかった。
一生懸命、"大丈夫だよ"って嘘ついてる。
不安なクセに、怯えながらも手探りで前に進もうとしてる。
ツバサは優しくて素敵な、私の自慢の弟。
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