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第1章(3)紫夕side
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しおりを挟む「……っ、わり。気持ち悪りぃよ、な」
「ハハッ」と苦笑いして、手を放すと前髪を掻き上げるようにして頭を押さえる。
ヤベー……めちゃくちゃ勿体無い事した、っ。
それはまるで、父親が初めて赤ん坊に「パパ」と呼ばれて何か思う瞬間の気持ちに似ていたのかも知れない。
せっかく名前呼んでくれたのに、語り掛けてくれたのに……。いや、そもそも寝てたその状況が生んだ奇跡なのかも知んねぇが……、……。
そうだ、奇跡に近い事のように、感じた。
しかも、手に持った毛布。
俺が風邪引かねぇように、被せてくれようとしたんだと思ったら、めちゃくちゃ胸が熱くなった。
んな人みたいな事、出来るように……なってたんだなーー?
いや、人なんだけど。
ああ、もうよく分からねぇが……とにかく、俺は幸せに感じた。
そしたら、胸の熱が込み上げて来て、それが目から涙になって溢れ落ちた。
「ーーっ、あ?……ッ」
自分に起きたまさかの出来事に、俺は人生で1番という位に動揺した。
慌てて手の甲やらで拭うが全然止まらない。まるで今まで溜めていた涙が一気に溢れ出したみたいに、拭っても拭っても止まらなかった。
雪は相変わらず、俺をじっと見てる。
やべぇ、止めねぇと……、……。
「ーー……紫夕?」
一瞬、刻が止まった。
"それ"は、ほんとに一瞬だった。
でも。
本当に自分の名前か?と、問い正したくなる位、心に響いた。
静かな闇の中ですぐに消えた、今まで聴いたどこの誰よりも綺麗な声。
父親が赤ん坊に感じる気持ちーー?
そんなモンは、あっという間に違うと確定した。
目の前の人物に、俺が抱く感情は……。
ーー俺は、コイツが欲しい。
そう思うと同時に、俺は雪の後頭部に右手を回すと、引き寄せながら自らも近付いて唇と唇を重ねた。
何時からそう想ってたーー?
……そんなの、きっと最初からだ。
だから俺はコイツと瞳が合ったあの瞬間から、「消したくねぇ」って強く思ったんだ。
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