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第5章 (3)ヴァロンside
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「行ってらっしゃい、ヴァロン」
朝食を済ませて、玄関まで俺を見送ってくれるアカリ。
何も聞かずに、いてくれるんだ。
俺は心の中で、ごめんねとありがとうを呟いた。
そして、彼女を真っ直ぐ見つめた。
「……6月15日。一緒に墓参りに行ってほしい。
大切な人の、命日なんだ」
嘘はつきたくない。
”大切な人”……。
アカリを傷付ける言葉かも知れないけど……。もう隠したくない。
全てを彼女に話そうと決めた。
「ーーうん。私も、会いたいな」
微笑んで頷いてくれたアカリ。
可愛くて、触れたい。
そう思ったら自然に彼女の頬に手を伸ばしかけていて、俺はハッとしてその手を止めた。
気持ちは落ち着いているけど、まだ自分自身が怖かった。
アカリの首筋に痛々しく残っている、俺がつけた独占欲の証。
駄目だーー。
「ヴァロン」
心の中の「駄目だ」という呟きをかき消すように、アカリが引っ込めかけた俺の手を自分の両手で包んだ。
そして……。俺の手に自分の頬を擦り寄せて微笑む。
柔らかくて暖かい彼女の頬。
「……。いってきます」
癒やされて、俺は自然に微笑んでアカリにそっと口付けていた。
「……気をつけてね」
「……うん。……っ」
なんだか、初めてキスしたみたいに……。照れた。
俺はアカリの頭をポンポンッと撫でると、家を出て任務に向かった。
外は曇り空。
今にも雨が降りそうだけど、もう大丈夫。
もう、自ら濡れたりしない。
「行ってらっしゃい、ヴァロン」
朝食を済ませて、玄関まで俺を見送ってくれるアカリ。
何も聞かずに、いてくれるんだ。
俺は心の中で、ごめんねとありがとうを呟いた。
そして、彼女を真っ直ぐ見つめた。
「……6月15日。一緒に墓参りに行ってほしい。
大切な人の、命日なんだ」
嘘はつきたくない。
”大切な人”……。
アカリを傷付ける言葉かも知れないけど……。もう隠したくない。
全てを彼女に話そうと決めた。
「ーーうん。私も、会いたいな」
微笑んで頷いてくれたアカリ。
可愛くて、触れたい。
そう思ったら自然に彼女の頬に手を伸ばしかけていて、俺はハッとしてその手を止めた。
気持ちは落ち着いているけど、まだ自分自身が怖かった。
アカリの首筋に痛々しく残っている、俺がつけた独占欲の証。
駄目だーー。
「ヴァロン」
心の中の「駄目だ」という呟きをかき消すように、アカリが引っ込めかけた俺の手を自分の両手で包んだ。
そして……。俺の手に自分の頬を擦り寄せて微笑む。
柔らかくて暖かい彼女の頬。
「……。いってきます」
癒やされて、俺は自然に微笑んでアカリにそっと口付けていた。
「……気をつけてね」
「……うん。……っ」
なんだか、初めてキスしたみたいに……。照れた。
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外は曇り空。
今にも雨が降りそうだけど、もう大丈夫。
もう、自ら濡れたりしない。
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