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第10章 (1)シュウside
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しおりを挟むそして……。
「……。
実は私、シュウさんに……嫉妬してました」
アカリさんは素直に、私が言えない事を口にした。
それは、決して嫌味がなく……。
「シュウさんといる時のヴァロン。遠慮がないって言うか、自由って言うか……。私の目には、生き生きして見えるんです」
私を羨ましいと……。素直に相手の事を認めた、可愛い嫉妬。
モヤモヤして、汚い言葉を吐き出した私の醜い嫉妬とは違う。
「……喧嘩しても、大丈夫ですよ。
ヴァロンはシュウさんが大好きですから!」
そう、私に笑顔で言うアカリさんを見たら……。
「……。
貴女には、敵いませんね」
私もつられて、微笑ってしまった。
不思議な笑顔。
そして無垢で、美しい心。
ヴァロンがアカリさんに惹かれた理由が、やっと分かった気がした。
そして、アカリさんなら……。この先何があってもヴァロンの傍に居てくれると、確信した。
……。
ヴァロンは、私が自宅へ遊びに行くのを待っていてくれた。
私の為にハーブティーを用意してくれていた。
その間は、私の事を考えていてくれた。
「俺は嫌なんだよ。
お前とこう、なんかモヤモヤしてんの。
いつもみたいに、いたいんだよ……ずっと。
……。それじゃ、駄目なのか?」
私に対して、変わらないでいてほしいと……。望んでくれた。
もう、充分じゃないかーー。
私がヴァロンの為に出来るのは、今ままでと変わらず彼と接する事だけだ。
醜い歪んだ愛は、ずっと心に秘めて墓場まで持っていこう。
私は自分の心の中で頷いて、ベンチから立ち上がると甲板の端へ行き柵の間際で髪を縛っていた紐を解いた。
夜風になびく背中まで伸びた髪は、少しでも可愛く思われたくて伸ばした……。私の捨てられなかった想い。
……でも、終わりにしよう。
私はポケットからナイフを取り出した。
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