上 下
233 / 297
(3)ギルバートside

3-2

しおりを挟む

すると、僕の返答を聞いたヴァロン君の表情が変わる。


「……あんた、馬鹿なの?」

「!ッ……え?っ」

ガラッと変わった彼の鋭い目付きに、ザワッと胸が騒ぎだして……。
心臓が嫌なバクバク音を立て始めた。

”殺される”……!?
そう、感じてしまうような……殺気に近い、迫力。

身体がカタカタと震えだす。

……。

でも、それは一瞬で……。


「いいよね。
そうやって他人に任せて、誰かに何とかしてもらえる人はさ。
言いなりになって、流されて、楽だよね?
すごく……」

そう言ったヴァロン君の瞳は切なくて、苦笑の表情を浮かべていた。


他人任せの、人生。

自分なりに、考えがあって……。
意思を持って、僕は家を飛び出したつもり……。だった。

自分の父親に知ってほしくて、自分の気持ちに気付いてほしくて……。
なんとか、したかった。


でも、実際はどうなんだ?

家出しても、何も変わってない。
自分のやりたい事も見付けられずフラフラして……。
なんとなく、仕事して。
ただ与えられた仕事を、して……。
けど。業績もろくに上げられずに、結局僕は周りの人を頼りにして……。生きてる。

失敗しても大丈夫だと。
自分の後ろ盾を、帰る場所を……。
父を、頼りにしてるんだ。

……。

全部全部、”つもり”だった。
何も、自分の力で頑張っていない。


”中途半端な人間”……。
そう言われた本当の意味が分かった。

リディアさんの瞳を真っ直ぐに見る事も出来ずに避けて、逃げて……。
言われて当然だと、何もしないうちから諦めて、怯えて……。

大切な親友の彼氏がこんなんじゃ、リディアさんが嫌っても仕方ない。
父さんが、認めてくれる……筈もない。
しおりを挟む

処理中です...