スノウ2

☆リサーナ☆

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第1章(3)紫夕side

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それから、俺は休みの日はもちろん。任務に行く日も合間合間に時間を作っては、ゆきの様子を見に行っていた。
よく一緒に飯食いに行ったり遊んだりしてた杏華きょうか達には「付き合いが悪い」って言われたけど、それでも俺はゆきに会いたくて仕方なかったんだ。

ゆきは相変わらず喋らないし、ほとんど部屋の角隅から動かない。けど、毎日のように通ううちに分かった事はいくつかあった。

まずは食事。
ベッドが嫌いなゆきはベッドに取り付けるタイプの机の上に食事を置かれ、そこで食べるのが嫌で、お気に入りの場所に運んで簡単に食べられるパンとか果物しかほとんど食べていなかったのだ。
それに、ここで出される食事はおそらくゆきにとって初めて目にする食べ物が多くて……。ゆきはそれを、食べ物だと認識していなかった。
その証拠に、病室に持ち込んで俺が一緒に飯を食ってたら、その様子を観察するようにじっと見てきて、「食べるか?」って同じ物を差し出したら受け取って食べたんだ。

それが分かって、担当の看護師にもう少し気に掛けてやってくれないか頼んでみたが、「忙しいから一人の患者に構っている時間はない」と返されて……。「あっそ、なら俺がやるからいい」と、俺は開き直った。
そんなこんなで、毎日必ず一回は顔を見せてしっかり食事をさせてやってるからか、一時期よりゆきは肉付きが良くなってきた気がする。

あとは、俺がやったブランケットもクッションも何気に気に入ってるみたいで、特にブランケットは部屋内を移動する時もずっと羽織ってる。
俺が何かを差し出して受け取る時やスプーンやフォークを使う時は絶対に左手で、ゆきは左利き。
字を読んだりはあんまり出来ないようだが、俺が話す言葉は理解してる。

……それから、検査は苦手。
誰だって当たり前だと思うが、呼ばれて検査に行く前。ゆきは俯いて、微かに震えてる。
そして戻って来るとずっと俯いてて、その日はもう俺と目を合わせてくれなくなるんだ。疲れるのか元気もなくなって、部屋の角隅から全く動かなくなってしまう。
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