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第1章(3)紫夕side
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しおりを挟む帰路を歩く足取りは重かった。
最後が最後だっただけにか、今日は余計に雪の事が気になって仕方ない。
絶対に、雪は俺に何か言いたかったんだーー……。
帰らないで?
寂しい?……怖い?……助けて?
雪の瞳を思い出すと、何故だかそんな言葉ばかりが頭に浮かぶ。
でも、雪が今居るのは病院だ。検査が苦手のようだが、夜はもう寝るだけで検査なんてない。
夜とか暗闇が苦手、って感じではないし。他に雪が怖がる事なんて、俺には思い付かなかった。
それでも雪の事が頭から離れない。ボーッとしながら歩いていると、いつの間にか寮の入り口まで来ていて、俺はある人物に呼び止められる。
「おおっ、紫夕君!おかえりなさい」
「!っ、……おう、ただいま」
俺に声を掛けてきたのは、この寮を管理している管理人さんだった。親父とも知り合いだったらしく、俺が親父を亡くしてこの寮に住むようになってから何かと気に掛けてくれる優しいおじいちゃんだ。
足を止めて挨拶を返すと管理人さんはニコニコしながら近付いて来て、俺に一枚の紙を差し出す。
「ほれ、これ頼まれた物だよ」
「ん?」
「禁煙室に移りたい、って希望してたじゃろ?やっと一室空いての、ハウスクリーニングも終わったからすぐにでも引っ越せるぞ?」
「!!っ、ホントかッ?!」
すっかり忘れてたーー!!
内心そう思いながらも、俺は器用にすぐに喜んだ。
そう、すっかり忘れていたが雪を助けた夜にタバコを断つ事を決めた俺は、禁煙室に移りたい、と管理人さんに希望していたのだ。
禁煙室に引っ越せるーー。
もちろん、禁煙室に移れるから雪と暮らせる訳ではない。
俺が雪を引き取れない理由はタバコではなく、俺が独り身で休みが不定休で、家に居られる時間が短いからだ。
でも、この引っ越せる事になった、と言う出来事が……俺の決意を動かすーー。
「管理人さん、引っ越す!次の休みに引っ越す!!
あと、同居人が増えるからそっちの手続きの書類も今すぐくれっ!!」
勢い良くそう言う俺に、管理人さんは「結婚でもするのかい?」と驚いていた。
そして、管理人さんに書類を貰った俺は、それを手にある人物の元へと向かう。
……
…………。
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