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第3章(4)紫夕side
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しおりを挟む自我を殺して変わろうとして、中途半端に橘側に足を突っ込んで……。今更、自分は橘達のようにはなれないと気付いた。
そう、大事な事やものに気付くのは、いつだって失敗や後悔をしてからなんだ。
そんな愚かな自分が情けなくて、恥ずかしくて……。雪に、合わせる顔がない。
けれど、そう思っていた俺に響夜が言った。
「間違ってたんスかね?」
「え?」
「少なくとも、最後の選択肢は間違ってなかったんじゃないですか?」
「……最後の、選択肢?」
響夜の言葉に、俺は思わず視線を向けて聞き返す。
すると、響夜は少し首を傾げて、考えるようにしながら答えた。
「だって紫夕さん、スノーフォールの赤ん坊、殺さなかったじゃないですか」
「え?」
「あれ、結構大きな選択肢だったと思いますよ?
もし、あの時紫夕さんが赤ん坊を斬ってたら……。雪は、絶対に泣いてたと思います」
「!ーー……ッ」
その時、響夜にそう言われた瞬間。何かに胸をグッと押されたような気がした。
響夜は言葉を続ける。
「でも、紫夕さんは斬らなかった。
途中、たくさん間違えたかも知れないけど、最後の最後の選択肢で間違えず、こっち側の人間じゃない、って気付けた。
それって、結構重要で……。少なくとも雪には評価高いんじゃないッスか?」
響夜の笑顔が、これまでとは違って見えた。
そう言われた言葉がグッと胸にきたのは、響夜の言葉に初めて気持ちが乗っているからだと感じたからだろうか?
「冷たいな紫夕さんも良かったッスけど、僕も以前の紫夕さんのが"らしい"って思います」
その言葉は、俺のこの数ヶ月が無駄ではなかった、と言ってくれているようで……。
また、"気付けたのなら大丈夫"と、再び歩き出す力をくれた。
響夜が、この数ヶ月付き合っていく内に変わったのか……。それともこれが本当の、元々の響夜なのかは分からない。
けど。動けなくなっていた俺を動かしてくれたのは、紛れもない事実だった。
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