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第4章(3)紫夕side
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しおりを挟む俺は昨日自宅に帰って来てから、ダメ元を覚悟に橘に連絡をしたんだ。
「サクヤと俺の家で一緒に暮らしたい」。そう言った俺に、橘は意外にも反対はせず、「定期的に検診を受けるなら許可しよう」とあっさりOKをくれた。
研究所に連れて行かなくてもこちらに担当医師である朝日が往診に来てくれる、との事だったし……。術後間もないサクヤが本当にもう大丈夫なのか心配だった俺は、検診を受けさせる事も嫌だとは言えなかった。
そんな事から、俺は橘のその条件を呑んだんだ。
今朝は昨日検査から逃げたからか、早速その往診の日。間も無く朝日がここにやってくるだろう。
その事をサクヤに話したら、意外にもサクヤは何人かいた研究員や医師達の中で朝日の事だけは気に入っているようで嫌がらなかった。
確かに。俺も初対面の時、朝日だけは橘の部下にしては嫌な印象は受けなくて、往診に来るのが奴である事に少しだがホッとしている。
「ーー……よし!終わった!」
溜めていた洗濯物+増えたサクヤの洗濯物干しが終了し、ようやく一仕事を終えた。「ふぅっ」とひと息吐いて洗濯物が入っていたカゴを手に家の中に戻ろうとすると……。
「望月さん、おはようございます」
「!っ、……ああ、おはよう」
ちょうどのタイミングで現れた朝日。
黒縁メガネを掛けて、薄い水色のシャツに薄茶色の綿パン、その上から白衣を纏って優しく微笑む姿はとても50代とは思えない程に爽やかで若々しい。
マジ、橘とは全然タイプが違う気がすんな……。
世間一般的にオッサンなのに程良い筋肉に腹が出てない体型、背もまあまあ高いし、白髪混じりだがハゲてねぇし、加齢臭とか絶対にしなさそうだ。
……っ、待てよっ?
もしかして、俺のがオッサン臭い?!
スーツなんて生まれてこの方一度も着た事がない俺の普段着は、大体ポロシャツかTシャツ。下手したら真夏の暑い時期はタンクトップに大体膝位までの短パン。そう、オッサン全開だ。
今だって、寝巻き用のTシャツにハーフパンツ姿のまま……。
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