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第5章(2)紫夕side
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しおりを挟む思わず聴き惚れていると、次第にサクヤの身体が白銀色に輝き始めた。その輝きすらも、優しい。
眩く激しい、目を刺されるような光ではなく、穏やかでホワッとした、雪のような輝きだった。
輝きはやがてサクヤの掌に集まっていき、そこから注がれるように斬月へ……。
「ーー……っ」
すると、何と言う事だろうか。
白銀の光を纏ってチカチカと輝いていた斬月から、刃こぼれと亀裂がスゥ……っと、消えたんだ。
…………。
……っ、……マジ、か?
目の前で起きた事なのに、俺にはすぐに信じられなかった。
サクヤが歌っていた子守歌のようなもので自分が眠ってしまい、実はこれは夢なんじゃねぇか?って思う。……けど。
「なおったー!
なおった!なおった!なおったぁ~!」
サクヤは立ち上がると、使い慣れてる俺でさえも決して軽いとは言えない斬月を持ち上げて、その喜びを表すようにピョンピョンとジャンプしていた。
信じられない事が目の前で起こりすぎて、俺の頭はついていけない。
ただただ呆然と見つめていると、クルッと一回転したサクヤが笑顔で斬月を俺に差し出して言った。
「……おこってないよ」
「!……っ、え?」
「"ざんげつ"、おこってないよ」
斬月、怒ってないよーー。
その言葉は、更に俺を驚かせた。
が、そんな俺に気付かず、サクヤは言葉を続ける。
「「わかってるよ。だいじょうぶ」っていってる」
「……」
「"ざんげつ"はしゆーのこと、「だいすき」だって!」
「っーー……」
嘘、だろーー……?
そう、心の中で否定しながらも、俺にはハッキリとサクヤの言葉が嘘でない事が分かっていた。
何故なら俺は、サクヤの前で一度も斬月の名を口にした事がない。サクヤが俺の魔器の名前を知る術なんて、この数日の中で絶対に有り得ないのだ。
つまりそれは……。サクヤが斬月と心を通わせているという事に他ならなかった。
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