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第6章(3)紫夕side
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しおりを挟むサクヤを捜しに行く、少し前ーー。
サクヤの隠している気持ちなんて知りもしないで、家の中に戻った俺は残された家事を熟していた。
と、言っても、最近はサクヤが色々と手伝ってくれるし、遊んだ後や食事の後もすぐに片付けをしてくれるからずいぶんと楽だ。
雪はキッチリした性格だったからな。
やっぱり幼い頃から根が真面目なんだろう。
そんな風にしか考えていなくて、暢気なものだった。
「よし、これで一通り終わったな。
斬月の手入れも先に終わらせちまうか!」
時計を見てまだお昼ご飯の準備に取り掛かるには早いと思った俺は、鞘に入れて壁に掛けてあった斬月を手に取ると、床に座って手入れを始める。
サクヤの手によって新しく生まれ変わった斬月。
もちろん親父の形見だから以前から大切に想ってはいたのだが、私欲で一度ボロボロにしてしまった事もあり今は更に特別だ。
もう二度と、雑に扱ったりしねぇからなーー。
鞘から抜くと、そんな想いを込めながら磨き上げていく。
「それにしても、すげぇな……」
スノーフォールを討伐した際にあんなに亀裂が入り刃こぼれが酷かった刀身に、今は全くその形跡はない。まるで新品刀のように輝く姿に、今更ながら惚れ惚れして思わず声が漏れた。
サクヤが使ったあの不思議な能力は、目覚めさせる際にスノーフォールの部位を使った事が影響しているのだろうかーー?
初めは、そう思った。
しかし、思い返してみれば魔器を再生させる能力は、以前雪も響夜との戦いで折れた自らの魔器ー雪桜ーにも使っていた。
と、言う事は、雪には元々、生まれつき魔器を再生出来る能力が宿っていた事になる。
「……橘は、当然知ってるよな?」
元々知っていたかは定かではないが、おそらく響夜から報告は受けている筈だ。
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