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第6章(2)サクヤside
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しおりを挟む「ーーそんなモノはただの錯覚だよ」
「!!っ、ぁ……ッ」
あまりの衝撃に、持っていた作りかけの花冠が手から離れて地面に散らばった。
突然、喉元を思いっきり掴まれたのだ。
ものすごい力。風磨さんは片手なのに、両手で掴み返して振り解こうとしてもびくともしない。
「君は悪い子だな。大人しく一緒に来れば、優しくしてやったのに……本当に、馬鹿だ」
「っーー……」
そう言う、風磨さんの表情は一変していた。
口元は笑っているのに、目付きが怖い。冷たいギロッとした目で、ボクを見ながら言う。
「いいか?お前は普通の人間じゃない。ただ本能のままに生きる魔物と一緒なんだ。
そんなお前が恋だの、愛だの……ククッ、笑わせるなよ」
精一杯の抵抗を"無駄だ"と言わんばかりに嘲笑いながら、更に力を込めてボクの身体を持ち上げた。
首が絞まって、声も出せなければ呼吸も出来ない。
「黙って僕について来て、僕のモノになればいい。
言う事を聞けば、毎日可愛がってやる。優しくしてやる。紫夕より"良い事"たくさんしてあげるよ」
ゾクリッとする表情が、ボヤける瞳に映る。
研究者達と同じで、完全に自分の事を"実験動物"にしか見ていない目。
「君だっていつか"ある時期"が来たら忘れるさ。君の母親が三月ではなく橘さんに抱かれたように……」
「っ、……ーーッ」
違うーーッ。
母さんは、三月さんの事を忘れてなんていなかった。
三月さんが居なくなって、会えなくなってしまってからも、ずっとずっと想い続けてたんだ。
……確かに、自分達は普通の人間ではない。
でも、ちゃんと感情はある。喜びを感じる事も、悲しみを感じる事も、誰かを愛する事だって出来るんだ。
それなのに、目の前のこの人もまた、自分を己の欲を満たす為の道具にしか思っていなかった。
悲しくて、悔しくて、痛くて、苦しくて……。ギュッと瞼を閉じた目から涙が溢れ落ちた。
っ、しゆーー……ッ。
そんな時でも思い出すのは、大好きな人。
瞼の裏に焼き付いているその人が、微笑んだ瞬間。
「ーーサクヤを放せッ、風磨!!」
その声にハッと目を開けると、背後を取って斬月を風磨さんに突き立てる紫夕の姿が、瞳に映った。
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