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第6章(4)紫夕side
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しおりを挟む魔具で、さっきの一撃の威力が半減したのか……っ。
魔具を身に付けた事がない俺にそれがどれ程のものか分からないが、こうして風磨が立ち上がっているのが現実だ。
風磨はゆっくりと歩いて行くと、ぬいぐるみを貫き、地面に突き刺さっていた風乱を引き抜く。
そして、刀身に付着していたぬいぐるみの破片を払うように振り回しながら言った。
「お前がどれだけ斬月とのシンクロ率を上げようとも、僕と風乱の絆の深さには敵わないよ。
……さぁ、サクヤを渡してもらおうか」
「っ……誰が渡すかッ!!」
俺は倒れて気絶しているサクヤを自分の後ろに隠し、落ちていた斬月を手に取る。
手から離れても尚、風乱を操る事が出来る風磨の実力を痛感させられるが、ここで退く訳にはいかない。
斬月、もう一度俺に力を貸してくれーー!!
そう願って、強く握り締めた。
ーー……しかし。
その直後に応えるようにして変化が表れたのは、斬月ではなかった。
ヒュゥ……ッと、この時期には珍しく冷たい風が吹いたと思ったら、俺の鼻先に舞い降りた小さな白い結晶。
その冷たさに見上げると、晴れている筈なのに空から無数の白い結晶が……。雪がチラチラと舞い、原っぱに降り注ぎだした。
それは、少し前に体験した、スノーフォールが姿を現す時と同じ現象で……、……。
……っ、まさかーー。
背後に感じるゾクッとした気配。
恐る恐る振り返ると、ゆっくり、ユラユラと揺れる身体を起こしながら……サクヤが、立ち上がった。
その白銀色のオーラのようなものに覆われた姿は、サクヤなのに、別人のようでーー……。
「……ユル、サナイ」
その甲高い声は、まるで龍の鳴き声のようでーー……。
「オマエダケハ、ゼッタイニユルサナイッ……!!」
サクヤの周りを、まるで身に纏うように吹雪が舞う。その際にフワリと靡いた長い白髪の間から覗いた瞳は、血が燃えたような真紅だった。
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