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第8章(3)紫夕side
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しおりを挟む「お、おま……」
「ん?」
「おまっ……なんで、ッ……」
「え?あ、和食嫌だった?」
「っ、そうじゃねぇ!ど、どうしたんだよ?その髪っ……。それに、お前の服!渡しただろっ?」
「え?だって、髪長くて邪魔だし……。渡された服、なんか全部女の子のみたいなんだもん。だから紫夕の服借りたんだけど……」
胸のドキドキを抑えながら尋ねると、その質問に雪は「駄目だった?」とばかりにまた首を傾げて俺を見つめてくる。
か、可愛いっ……!!!
その仕草に再度胸を貫かれながらも、俺は冷静を装って思い返した。
そう言えば雪に着替えで渡した服は、全部前回の買い物でサクヤを女の子だと勘違いした店員が選んだ物を買ったやつだったのだ。
それを思い出して思う。
きっと、あれを着てくれても可愛かっただろう。
でも、これは別格だ!!
「神様、ありがとうございます」
「え?……わっ」
必死に堪えようとしたけど、溢れ出した愛おしさは心の声が口から出ると同時に行動に表れてしまった。
俺は雪を自分の腕の中に閉じ込めるようにして抱くと、頬をすり寄せながらデレまくる。
「あ~まさに、俺の嫁が可愛すぎてツラい~」
「ぷっ、何それ?」
「お前さ、その格好狙ってんだろ~?」
「?……狙ってる?」
「可愛すぎんだよ~」
「これが?!
……やっぱり紫夕って変~!」
「っ!何だと~?」
「っ、ちょ!やめてよ~紫夕!くすぐった~い!」
変、と言われた俺が仕返しにくすぐると、腕の中で雪が暴れながらケラケラ笑う。
その姿と笑顔を見てたら、さっき風呂場で悩んでいた事の答えがあっという間に出ていた。
そうだ。
俺は、雪と幸せになりたいーー。
そんな気持ちが、強く溢れた。
自分が犯してしまった過ちは消せない。
罪悪感や後悔もある。
でも、俺の中でどうすればいいかの答えが、見付かった。
傷付けたものや失ったものに報いる為にも、全てが無駄ではなかったんだ、って思う事にしたんだ。
そして、ありがとうって感謝の気持ちを忘れずに生きて行こう、って思った。
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