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第9章(3)雪side
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しおりを挟む「雪、どんな服がいい?好きなの選べよ、どれでも買ってやるぞ!」
「……っ」
でも、いっぱいお店があって、服も多過ぎて……。キョロキョロするだけで、オレにはどの店がいいのか、どんな服がいいのか分からない。
おまけに、何処も人が多くて、耳の良い俺にはザワザワした声や音が頭に響くみたいになってきて、次第に頭痛がしてくる。
……帰りたい。
けど、まだ何も買ってないのに、そんな事は言えない。
「……ごめん、紫夕。少し、休んでもいいかな?」
そう言うのが、精一杯だった。
すると紫夕は一瞬「へ?」と不思議そうにしたが、自分の中で納得したように笑顔になって頷く。
「そっか!そうだよな、腹減ったよなっ?
もうすぐ昼飯時だし、店が混む前に先に飯食うか~!」
……そうじゃ、ないんだけど。
お腹なんて空いてない。
疲れて、食欲なんてない。
でも、今はとにかく休みたかったオレは「うん」って返事して、紫夕と一緒に移動した。
……
…………。
けど、人が多い町の飲食店。
当然、そこに行っても人が多いのは変わらない。
唯一の救いはすぐに席に案内されて、椅子に座れた事。とりあえず運ばれて来た氷入りの冷たい水を飲んで、落ち着こうと思った。
しかし。
オレとは正反対に元気いっぱいの紫夕は、テーブルの上にメニューを広げて語り掛けてくる。
「雪、何食う?」
「っ、……え、と…………」
「やっぱ肉だよなっ?あ、でも、こっちのご飯系もいいな~。
雪オムライス好きだろ?それにするか?」
「っ……」
肉、とか、今脂っこい物は食べたくないし。
オムライスは好きだけど、そんなにガッツリ食べられそうにない。
残してもおそらく紫夕が食べてくれるのだが、最初から食べられないと分かっていて注文する事に気が引けたオレは正直に自分の気持ちを伝える事にした。
「サ、……」
「ん?」
「サラダとかで、いいんだけど……」
でも、この言葉の後の紫夕の返事を聞いて、オレは自分の気持ちが止まらなくなってしまう。
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