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第13章(3)雪side
13-3-1
しおりを挟むゆっくり、最期の時間を過ごせたら、って思ったーー……。
悲しくて、寂しいけど、"魔物の心"になっている時は全てを忘れられる。
人としての心の時にどんなに色々考えていても、空腹が近付くと……。いつしか、魔物の心に変わってるんだ。
魔物の心に変わってる間の事をオレは覚えていない。次に人として意識が戻る前には眠っているようだから、意識がなくなってからどの位の時間を魔物の心で過ごしているのかも正直分からない。
紫夕と離れて、どれくらい時間がたったんだろうーー……?
時計もないから、食事の回数や、何度朝と夜を迎えたかで、判断するしかない。
おそらく、もう三日は過ぎた筈だ。
「……お風呂、入りたいな」
手を洗ったり、顔を洗ったりしたくらいじゃ血生臭い匂いは取れない。
着替えもないから、今着ている服を洗濯もしたい。
オレは河原に行くと服を脱いで洗い、服を乾かしている間に水浴びをして少しでも血の匂いと汚れを落とそうと考えた。
やらないよりは、マシだよね?
洗剤もない。石鹸もなければ、シャンプーもない。それでも、オレはなるべく綺麗に髪や身体を洗った。
今が夏でよかった。服もすぐに乾くし、身体が濡れていても寒くない。
……でも。
もし、寒くなったら、どうしよう。
そう頭を過ったが、自分が冬まで生きていられるかも分からないから……。考えるのは、すぐにやめた。
それよりも、
髪の毛、切ろうかな……。
次にそう思った。
長いと洗うのも乾かすのも大変だし、森の中で過ごすサバイバル生活には何かと面倒な事が多かった。
オレは氷の刃を造りだすと、髪を掴んで切り落とそうとした。……けど。
「っ、え?!切っちまうのかっ?勿体ねぇ!?」
紫夕の言葉が、頭に浮かんだ。
「俺、好きだぜ。
洗うのも、乾かすのも俺がやってやるから……。そのままでいいじゃん!」
以前、切ろうとした際に、紫夕にそう言って止められたのを思い出す。
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