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第14章(4)紫夕side
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しおりを挟むもしも、人間と魔物が共存出来る、そんな世界が創れたらーー……?
そんな世界が創れたら、雪とずっと一緒に居られる。
人間が魔物をもっと理解して、付き合い方を学べば、きっと争う事なんてしなくても一緒に暮らせるのだ。
不思議だった。
つい去年まで、あんなに毎日のように魔物を狩っていた自分の気持ちが変わった。
雪を好きになって、誰より大事な存在になって、ずっと一緒に居たくて……。全ては雪と生きていきたいと言う強い想いで、俺は新たな人生に動き出す事になる。
……
…………そして、善は急げ。
俺は、魔物との共存生活を現実化するべく、まずは紫雪をペットホテルから連れ帰ってくると、雪と対面させてみる事にした。
もしこれで雪が紫雪を"獲物"だと認識してしまったら、全て終わりだーー……。
俺以外に対して、もしも雪が先に攻撃的な様子を見せれば、俺の夢は夢で終わる。
けど、もし雪が無闇に襲ったりしないと分かれば、魔物によって知能や気性の偏りはあるかも知れないが、別の生き物とも共存が可能だ、と言う事になる。
「雪。
ホラ、紫雪って言うんだ。可愛いだろ?」
俺は内心ドキドキしながらも必死に抑えて、キャリーバッグ越しに会わせてみる事にした。
雪は興味津々、と言った様子で、すぐに近寄ってくるとクンクンッと匂いを嗅ぎ、キャリーバックの中の紫雪をじっと見つめていた。
一方の紫雪も、一時期魔物としての力が目覚め始めた雪を警戒していた事から心配だったが……。今は落ち着きを取り戻しているのか、キャリーバックを覗く雪を見つめ返している。
ーーきっと、大丈夫だ。
俺は、意を決してキャリーバックの扉を開けると、中から紫雪を出してやった。
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