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第17章(2)雪side
17-2-5
しおりを挟む亜希さんの気配が扉の前から消えて、オレは立ち上がると覗き穴から外の様子を確認した。
誰もいないのを確かめてそっと扉を開けると、ドアノブに掛けられていたのは手提げのビニール袋。中にはリンゴと、何やら横長の四角い箱。
その四角い箱は、以前マリィの手伝いをしていた際に何度か目にした事がある。簡単に自宅で妊娠を確認出来る検査キットだった。
オレは、玄関の扉をしっかり施錠して壁掛けの時計を見つめた。
まだお昼過ぎ。紫夕が帰って来るまでには、時間が充分ある。
オレはリンゴの入った袋をテーブルに置くと、中から検査キットを取り出して見つめた。
……調べるなら、今かな?
今のオレは色んな意味で病院に行く事も、医師に診てもらう事も出来ない。
魔物の血が入った自分に、この検査キットが正しく判定出来るのか定かではないが……。今、妊娠の確認を頼れるものがこれしかないのも事実だった。
紫夕に相談してからの方が、いいかな?
そうとも思ったが、もし、違った場合に変な心配をかけてしまう事になる。
ただでさえ今までたくさん心配かけてきて、更に仕事で疲れて帰って来るのに……。余計な心労は掛けたくない。
調べて、ハッキリさせて……。
それで、結果次第で相談すれば良いよね?
そう決めて検査キットを手にトイレに向かう自分は、信じられないくらい冷静だった。
きっと、オレは検査キットを使わなくても、結果が分かっていたんだと思う。
そして、自分がこの先どうしたいのかも、すでに心の中で決まっていたんだ。
……
…………。
検査キットに付いていた説明書通りにやって、自分の心の中で結果が出るまでの秒数を数えた。
そして、この時。
オレは初めて、自分が魔物である事に感謝出来たーー。
不安や戸惑いは、もうなかった。
数え終わって、検査キットの判定を見た瞬間。胸いっぱいに広がったのは、喜びと幸福。
自然と溢れた涙で滲む瞳に映るのは確かに「陽性」を記す判定で、自らが妊娠している証だった。
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