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第17章(3)紫夕side
17-3-1
しおりを挟む「なぁ!新入りさんもこっちで一緒に一本どうだい?」
俺が日雇いの仕事に選んだ森の伐採作業。町の近くの森を切り拓いて、新しく田畑などを作るんだとか……。
その作業を手伝っていると、少し離れた場所でタバコを吸っていた職人達が声を掛けてきた。
「……いえ、大丈夫です」
しかし、軽く会釈して断った。
雪を引き取る、って心に決めてからずっと断っていたタバコ。
これまで吸わなくても平気だったが、自分の心が今不安定だからか……。正直、周りが吸っていると、吸いたくなる時もある。
でも、雪の為に我慢だーー。
可愛い笑顔を思い出して、俺は職人達と距離を保つと仕事に精を出す。
魔物としての力が目覚め始めてから嗅覚も鋭くなった雪は、匂いにも敏感だしな。タバコ吸う人の側に居るだけでも移りそうだし、ましてや吸ってしまったら完全にアウト。もう一生、キスなんてさせてもらえないかも知れない。
明後日はデートの約束もしたしな……。
いっぱい一緒に楽しんで、嫌な事は忘れよう。
今朝、出掛ける約束をした時の雪の反応を思い出すと、とても胸があったかく幸せな気持ちになれた。
そうだ。俺と雪は愛し合ってるんだ。
心で繋がってて、無理矢理とか……一方的な気持ちじゃねぇ。
自分と居られる事を、本当に嬉しそうにしてくれる雪。
自分の本当の父親である強姦魔や、雪を虐待した奴等とは関係が違う。
俺は心から大切にしようと思ってたんだ。
けど、そんな想いは些細な事から崩れていく。耳に入ってしまった、ある情報から……。
「精が出るねぇ~兄さん!美人の奥さんの為か~い?」
ーー……え?
その職人さんの問い掛けに、俺は手を止めた。
何故なら、"美人の奥さん"。俺は、ここで働く人達に自分の口から雪の話をした事なんてなかったからだ。
今宿泊しているコテージを借りる際に、町長さんには体調を崩している連れがいる事を話したが……、……。
なんで、職人達が雪の存在を知ってる?
町長が、話したのかーー……?
俺に強姦魔の事を話したように、話好きと言うか、口が軽い町長だ。その可能性はある。でも、…………。
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