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第19章(2)朝日side
19-2-6
しおりを挟む私は、最低だーー……。
去って行く三月さんと紫夕君の背中を見つめていたら、受け取った本が手から滑って地面にバサッと広がり落ちた。
そこで初めて気付くんだ。
落ちた本を拾おうとしたら、ページとページの間に挟まれていた封筒。
震える手で中身を見ると、中に入っていたのは……
『いつも本を貸してくれてありがとう!
お礼に、今度一緒にいきましょう! 紫季』
そう書かれた手紙と、博物館のチケット。
それは、私が紫季さんを誘おうと思って話題に出したものの、後一歩の勇気がなくて誘い切れなかった……。夢で終わっていた、デートの約束だった。
ーー……ああ。
私は、本当に、大馬鹿者だ。
何故、もっと勇気を出せなかった?
何故、自ら考え、動く事が出来なかった?
私に出来たのは命令に従い、波風を立てないようにして来ただけ……。両親の為だと優しい息子のフリをして、自分の事しか考えていなかった卑怯者だ。
……
…………。
…………そして、今。
そんな私に、再び訪れる試練。
「ただの人間との間に出来たガキなど、私には興味がない」
サク君の中に宿っている新しい命の存在に気付いた橘さんが、私に下す命令。
「朝日、始末しろ。
お前が処置してやった方が浮かばれるよ。なんせ、お前の孫だもんなぁ?お祖父ちゃん」
あの日と同じ口調と表情で、橘さんは私に、そう告げる。
……
…………。
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