スノウ2

☆リサーナ☆

文字の大きさ
上 下
380 / 589
第19章(2)朝日side

19-2-6

しおりを挟む

私は、最低だーー……。

去って行く三月みづきさんと紫夕しゆう君の背中を見つめていたら、受け取った本が手から滑って地面にバサッと広がり落ちた。

そこで初めて気付くんだ。
落ちた本を拾おうとしたら、ページとページの間に挟まれていた封筒。
震える手で中身を見ると、中に入っていたのは……

『いつも本を貸してくれてありがとう!
お礼に、今度一緒にいきましょう!  紫季しき

そう書かれた手紙と、博物館のチケット。
それは、私が紫季しきさんを誘おうと思って話題に出したものの、後一歩の勇気がなくて誘い切れなかった……。夢で終わっていた、デートの約束だった。

ーー……ああ。
私は、本当に、大馬鹿者だ。

何故、もっと勇気を出せなかった?
何故、自ら考え、動く事が出来なかった?
私に出来たのは命令に従い、波風を立てないようにして来ただけ……。両親の為だと優しい息子のフリをして、自分の事しか考えていなかった卑怯者だ。

……
…………。

…………そして、今。
そんな私に、再び訪れる試練。

「ただの人間との間に出来たガキなど、私には興味がない」

サク君の中に宿っている新しい命の存在に気付いたたちばなさんが、私に下す命令。

朝日あさひ、始末しろ。
お前が処置してやった方が浮かばれるよ。なんせ、お前の孫だもんなぁ?お祖父ちゃん」

あの日と同じ口調と表情で、たちばなさんは私に、そう告げる。

……
…………。
しおりを挟む

処理中です...