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第20章(2)マリィside
20-2-1
しおりを挟む「なぁ、マリィ。
今夜、泊まってもいいかな?」
あの時、貴方を受け入れていたら、何かが変わっていたのかしらーー……?
毎年毎年、貴方の命日が来る度に休暇を取って故郷に向かいながら、アタシは思い出す。
恋人、和希と過ごした最後の夜の事を……、……。
それは、和希の二十歳の誕生日のお祝いを二人で過ごした日だった。
誕生日のお祝い、と言っても、彼は隊員の任務。アタシは救護班としての仕事で別々だから、実際の誕生日からもう一ヶ月以上過ぎてしまっていた。
それでも、和希は嬉しそうにしてくれた。
アタシの自宅に招いて、手作りの料理と誕生日ケーキを用意して、彼が任務でも使えるよう新しい手袋をプレゼントした。
「マリィ、ありがとな!めっちゃ嬉しい!!」
素直で、まるで子供みたいな無邪気な笑顔を見られるのが、アタシの幸せ。その笑顔を見ると、アタシの心もホワッと光が灯ったように暖かくなるの。
アタシ達は同じ町で生まれて、家がご近所さんだった事もあって、毎日のように一緒に過ごしていた。いわゆる、幼馴染み。
和希は誰にでも屈託なく無邪気に接するし、優しくて活発だから子供の頃から人気者。
一方のアタシは内気で、男に生まれながらもなかなか男の子らしく出来なくて……。気付けば、同世代の友達から避けられ、自分の両親にでさえ「お前はうちの子じゃない」って疎まれる存在になり……どんどん人に心を閉ざして行った。
そんな中、変わらないでいてくれたのが和希と、そのご家族だった。
「お前はお前だよ!」って言ってくれる彼も、そんな彼を産んでくれて育ててくれたご家族も、本当に本当に暖かかった。
アタシが故郷を大っ嫌いにならずにいられたのは、間違いなく和希達家族のおかげ。
けど。
やっぱり、いつまでも実家で暮らすのが辛かったアタシは、16歳になると生まれ育った町を出て自由に生きて行く事を決めたの。
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