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第2章(2)ジャナフside
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しおりを挟む残されたボクは困惑しながらも、胸に灯った暖かい温もりが心地よくて……。まるで恋をしたように、ドキドキしていた。
その場から動けなくて、ただただツバサの事を目線で追っていた。すると……。
「すごいよね、彼。驚いただろう?」
「!……あ、お邪魔していますっ」
そんなボクに声を掛けてくれたのは、今回のツバサの下剋上の相手である金バッジのナツキさんだった。
ナツキさんはツバサからボクの事を聞いていたらしく、簡単に今回の下剋上の内容。今行われているこの舞台稽古が大切なその一環である事を教えてくれた。そして……。
「ツバサ君の父親もね、変装や演技を得意とする夢の配達人だったんだよ。依頼された内容に合った人物に化けて、なりきって任務を熟す変幻自在の特技。僕ら夢の配達人の世界では、違和感なくその場に溶け込むことから"カメレオン"って呼ばれる」
ツバサのお父さん、ヴァロンさんの事について話してくれた。
変幻自在に化ける特技カメレオン。
ツバサのお父さんが伝説の夢の配達人って呼ばれていて、すごい人なのは雑誌や噂で知っていた。もうずいぶん前に引退しているけれど、今でもヴァロンさんの武勇伝を聞いて、憧れて、夢の配達人を目指す人も少なくないとか。
そんなすごくて立派なお父さんと同じ世界に飛び込んで生きるツバサ。
プレッシャーだったり、コンプレックスだったり、嫌な事もあるんじゃないか?ってボクはこれまでずっと思ってきた。
……でも、…………。
「ーーけど、ツバサ君は更にその上を行く素質を持ってる。
君も目の当たりにしただろう?あの声。
ヴァロンさんも変装の度に声を低くしたり高くしたり、その人物に合った声を作ってた。でも、それはあくまで男性の声限定。さすがに女性の声を出し、女性を演じる事は出来なかった」
初めは懐かしむように語っていたナツキさんの声が、まるで緊張しているかのように少し震えているように感じた。
すると、話を聞いているうちに、ボクの胸もさっきのツバサを思い出して再び熱くなり始める。
「けど、ツバサ君は生まれながらの"両声類"。男性でありながらも女性の声も出せる、ヴァロンさんでさえ習得出来なかった変幻自在の声を持ってるんだ。
……彼は間違いなく、父親の上を行くだろう」
心の底から震え上ってくる得体の知れない感情。それはきっと本物の"感動"というものに違いなかった。
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