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第11章(1)アカリside
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しおりを挟む「ッーー何するのよッ?!」
私の叫び声と同時に、ガッターン!ガッシャーン!という物音が店内に響く。
咄嗟にアラン様を突き飛ばした衝撃で、テーブルの上の食器や座っていた椅子が倒れたからだ。
でも、そんなの知らない。
周りのお客さんや定員さんが驚き騒めいているが、今の私にはそんなの目に入らなければ耳にも届かない。
ーーキス、された?
アラン様を突き飛ばした手が震える。
唇を押さえて、さっきの感触が夢でなく現実でと実感すると、その震えは全身に行き渡っていく。
信じられないーー。
いくらシャルマ様から命令されていたとしても。私がマオさんにとって邪魔な存在だとしても、こんなの酷い。
けど、それよりも……。
怒りよりも悲しみが込み上げてくる。
別の男性に、奪われてしまった。
これまで大好きな彼以外触れる事がなかった唇を、他の男性に許してしまった。
悲しみと罪悪感から、涙が堪えきれずに溢れてくる。
「っ……アカリ様」
「触らないでッ……!!」
力一杯突き飛ばしたのに倒れる事もなくすぐ私に手を伸ばしてくるアラン様に、自分の無力さを痛感させられているようだった。
私は伸ばされた手を振り払うと、もうアラン様の顔は見ずにその場から駆け出して店を出た。
全速力で走って女性の洗面所に入ると、すぐに水道の蛇口を捻って唇を洗い、口の中をすすぐ。
完全に注意を怠った。
怖い人じゃない、嫌いではない。
アラン様にはそんな認識があったから、すっかり油断していた。
「っ……大っ嫌い」
この出来事は、私の中でアラン様という人物の印象が確実に変わった日だった。
思わず口から溢れた「大っ嫌い」。
しかし言葉とは反対に、忘れたくても、ムカムカしながらもアラン様の事が浮かぶ。
私の心には、確かに”アラン様”が刻まれてしまっていたのだ。
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