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第11章(1)アカリside
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しおりを挟むフォークで上手く刺せないくらいに柔らかい生地は、口の中であっという間に溶けるようになくなっていった。
ホイップクリームも、見た目のボリュームほど重くなくて程よい甘さが美味しい。
しかし。
そう思うだけで、笑顔が溢れる事も胸が弾む事もなかった。
黙々と食べる作業に、一枚食べ終わる頃には何だかお腹いっぱいになってくる。
「……口に合わないのか?」
一旦フォークとナイフを置き、アイスティーを飲む私にアラン様が尋ねてきた。
「そうじゃないわよ!」って心の中でツッコミを入れる。敵とも言える相手に正面から見つめられながら、一人でこんな大きなパンケーキを食べろと言われて、楽しく美味しく食べられる訳がない。
まさに、無理な注文というやつだ。
怖い人ではないけれど、イマイチ女心が分かってないというか……。気遣いがないと言うか。
そんなアラン様を見ていると、またヴァロンの事が頭に浮かぶ。
ヴァロンなら、絶対一緒になってパンケーキを食べてくれるだろう。
むしろ、私よりも食べちゃって、その上「こっちの味も食おうぜ!」って、全種類注文しちゃうの。
幸せな想像の中で、愛しい人は今も鮮明に思い出す事が出来て、私に大好きな笑顔で微笑んでくれる。
首を少し傾けて、意地悪そうにも見えるのに、見つめてくれる瞳はとても優しい……。
「ーークリームついてるぞ」
「えっ?……」
夢を醒まされるようなその言葉に、ハッとする間もなかった。
唇に触れた感触に、幸せな想像が、まるで幻だったかのように消えた。
唇から感じる生温かい感触と、コーヒーの匂い。
笑顔も、消える。
自分だけ時間が止まったみたいに、身体が強張る。
瞬きも出来ない見開いた瞳に映るのは、顔を少し傾けて目を閉じている、アラン様の顔。
……な、に?
え?……っ、え?
何が起こっているのか、全く頭が付いていかない。
そんな私の唇を、テーブルに手をついて前屈みになって、唇を密着させたままのアラン様の舌が……。ペロッと、舐めた。
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