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第13章(1)アランside
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しおりを挟む「お、お待たせ致しました」
私が最近頻繁に訪れる港街にあるパン屋。
そこで今日も働くアカリ様は、顔を引攣らせて笑顔を作りながら注文の品を届ける為に私の席へやって来た。
キスしたあの日以来すっかり警戒されてしまい、会いに来ても無視される日々だったが……。
「あ、ありがとうございます。アカリさん」
ーー今日は違う。
私と同じ席に座っていた兄上がそう言うと、彼女は「いえ、どうぞごゆっくり」と言って微笑みながらホットコーヒーとホットミルクをテーブルに置いた。
去り際に私に向けられる視線はジトッとしていたが、私の作戦は成功。やはりアカリ様は兄上が一緒ならば私を避けない。
ようやく思い通りになった優越感に浸りながら、仕事に戻ったアカリ様に視線を向ける。
今日は注文された品を席まで届ける係なのだな。
私達が座る外のテラス席から、透明なガラス戸に遮られた店内を見つめていると、一生懸命に接客する彼女が映った。
ーー不思議だ。
彼女からは見ているだけで元気を貰える。
「嬉しそうだね」
アカリ様を見てつい笑みをこぼしていた私に、兄上が言った。
「アランとアカリさんが知り合いだったなんて……知らなかった」
そう言葉を続けた兄上は、複雑そうな表情。
今朝、久々の休暇だった私が「一緒に出掛けませんか?」と声をかけた時は明るい表情を見せていたのに、行き先がアカリ様の勤め先のパン屋だと分かると、分かりやすいくらいに表情を曇らせていった。
様々な報告から、兄上の心中は察する。
……だが、私はただ単にアカリ様に避けられたくないが為に兄上をここへ連れて来た訳ではない。今日どうしても兄上とこの場を訪れ、話がしたかったのだ。
それが例え、兄上に"ヴァロン"だった頃の記憶を呼び醒してしまう恐れがあったとしても……。
兄上専属の執事、ディアス。奴を強引に振り払ってまでここに来たのは、私の気持ちを兄上に伝える為ーー。
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