夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】

☆リサーナ☆

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第15章(4)ディアスside

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『一生のうちの僅かな期間だけど自分の人生で最上級の幸せを得られる短い人生と、平凡な毎日で長い一生を終える人生と……どちらが正しい道なのかな?
ディアスならどっちを選ぶ?
……僕?僕は、そうだなぁ……一度きりの人生なら、例え短くても最上級の幸せを知りたいな』

リオン様、貴方はいつだったかそう言いましたね。
貴方様にとってのその最上級の幸せが、アンナ様とヴァロン様との生活だったのですか?


……私は、納得がいかなかった。
どちらかと言うと、初めは憎んでいたのかも知れない。

だって、そうではないか。
アンナ様と出逢わなければ、ヴァロン様が産まれなければ……。リオン様はきっと平穏な人生みちを外れる事はなかったのだから……。

そう。私はアンナ様も、リオン様のお子であるヴァロン様の事でさえ好きではなかった。
あの日までは……。

……。
それは、ヴァロン様がまだ幼い日の事。
シャルマ様によって引き離されたアンナ様とヴァロン様を"自分の代わりに見守ってほしい"と、リオン様から命を受けていた時の事……。

「ーーおやめなさい」

昨夜に降った雨が地面に溜まった泥水を自ら被り、白金色の髪色を変えようとしているヴァロン様の手を私は掴んで止めた。


「こんな事をされても、髪色は変わったりしません。
風邪をひかれて、服を汚してお母様に怒られて、良い事など一つもありませんよ?」

近くの井戸まで連れて行き、持っていたハンカチを濡らして汚れた顔を拭ってやりながら私はヴァロン様の顔をよく見た。

母親のアンナ様によく似た整った顔立ち。この白金色の髪と瞳さえなければ、きっとこの子は町で良い意味で評判の少年となっていただろう。


……まあ、どちらにせよ私にとってはとても好きになれない顔立ちだが。
母親のアンナ様から愛を貰えず、町の人からは疎外そがいされ、唯一心の拠り所だったリオン様がいなくなった今、この子に味方などいない。

辛いでしょう?
悲しいでしょう?
生きていても、良い事などないでしょう?
それならば、……。

この子が居なければーー。
私の心の奥底にあった黒い想いが、拭っていた手を細い首筋に導く。が……。


「ーーきれいだね」

それはまさに、私の指がグッと首に力を込めようとした瞬間だった。
ヴァロン様が私の長い黒髪の裾に触れながら言った。
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