夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】

☆リサーナ☆

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第16章(3)マオside

3-1

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心臓が、止まるかと思った。


月姫様ーー?

物語りの舞台になった砂浜でアカリさんを見た瞬間、そう思った。


砂浜で寝そべっていたら、呼ばれた気がした。
"マオ"って名前呼ばれた訳じゃなく、上手く言えないけど……呼ばれた、気がしたんだ。

ゆっくり身を起こして振り返ったら、そこには月の光を浴びた彼女がいた。
まるで空から降りてきたのか?と疑うくらいに、僕の前に突然現れたアカリさん。

夜風に髪をなびかせて、僕を見つめるその姿が、フッと一瞬彼女の装いを桃色の着物に変えて……。
本物の月姫様だと、思った。


逢いたいと思っていた自分が見せた幻覚ーー?

そうかも、知れない。
でも、すぐにその姿はアカリさん自身になった。

その姿を見たら、何故かホッとした。
そして悟った。
僕はいつの間にか月姫様ではなく、"アカリさん"に逢いたかったのだと……。
物語りを読んだ時に惹かれた月姫様に彼女を重ねていたのではなく、今、この場にいるアカリさんを見つめていたかったのだ……と。


次第に高鳴ってくる鼓動背中を押されて、すぐに駆け寄りたい気持ちでいっぱいになった。
けど、今の自分……。白金色の髪と瞳の容姿を思い出したら、脚がすくんだ。

この姿を、彼女はどう感じたんだろう?

そう思ったら怖くなって、すぐにこの場を逃げ出したいと思った。
鳥のように羽根を広げて、翼を羽ばたかせて飛び去りたいと思った。


……でも。
そんな僕に、彼女は微笑った。
怯える僕の心を鎮めてくれたのは、彼女の笑顔。

言葉でもない。
触れ合う事でもない。
僕を癒してくれたのは、アカリさんの笑顔だった。

視野が、滲む。

もう、何もいらない。
彼女の笑顔が見られるなら、それだけでいいと思った。


凍っていた心が溶けたと思ったら、すくんでいた脚も解けて、真っ直ぐに彼女の元へ向かっていた。
触れた瞬間に流れる涙。
情けないけど、アカリさんの前では気持ちと一緒に涙が溢れてしまうんだ。


"っ……微笑って?
貴女の笑顔を、もっと……見ていたいっ"

僕の我が儘なお願いにも、貴女は応えてくれたね。
たくさん苦しんでる君を知らずに、僕はとても残酷な事をし続けていた。

……そして。
これから、また、傷付ける。


そんな事を知らず、ただ束の間の幸せに巻き込んだ僕を……。君はそれでも、愛してくれますか?
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