上 下
177 / 213
第17章(4)マオside

4-2

しおりを挟む
***

「……ふ~~っ。もう食べられないや」

お昼ご飯をすませ、部屋に戻った僕はベッドの上に仰向けで寝転んだ。

アカリさんと一緒に朝ご飯を作って、一緒に食べたところすっかり盛り上がり……。なんと昼食もそのままの流れで一緒に作ろう!となったのだ。
つまり、朝食を作り食べ、昼食を作り食べをノンストップ。
楽しくて美味しくてついつい食べてしまったが、さすがにお腹はもうパンパンだ。


「でも……楽しかったな」

無茶な事をした、と思いつつも思い出せば表情は柔らかく緩む。気を張らずに誰かと一緒にこんなに楽しい時間を過ごすのは初めてだった。


もっと一緒に色んな事をしたい。
また、早く会いたいーー。

アカリさんが相手だとそんな感情が尽きる事なく溢れてくる。少し休憩をしたら彼女が別荘内や別荘周りを案内してくれる予定だが、今か今かと待ちきれず心臓はドキドキだ。
胸を弾ませながら横になっていると……。

ーーコンコンッ!
部屋にノック音が響いた。


「!……はい」

「失礼致します。お客様の洗濯物が出来ましたのでお持ちしました」

起き上がり返事をすると、そう言って部屋に入って来たのはこの別荘の使用人さん。その手には、綺麗に洗濯され畳まれた昨夜僕が着ていた服があった。
祖父の屋敷を出てから着替えていなかった僕は、ここで服を借りて自分の服を洗濯をしてもらっていたのだ。


「お世話をお掛けしました、ありがとうございます。
……あ、すぐに着替えてこの服はお返しした方がよろしいですか?」

歩み寄って自分の服を受け取りながら、僕は今着ているワインレッドのセーターについて尋ねた。
すると、以前の僕の事ヴァロンの事を知らない新人の使用人さんは、悪気もなく素直に答えてしまう。


「今着ていらっしゃる服のご返却は、いつでも大丈夫です。
そちらはアカリ様の前のご主人様の物でして、今はもう使用しておりませんから」

「っ……」

使用人さんの言葉を聞いた僕は、なんとも言えない衝撃を心に受けて言葉が出なくなった。
しおりを挟む

処理中です...