グレイ

第１章（３）紫愛side

1-3-5

兄貴にーにの隣に恋人が居る姿を想像したら、昼間にハルさんとリンさんの仲の良さを目の当たりにした時と同じ位……。
ううん、それよりも、胸がモヤッとする気がした。

っ、ダメダメ……！！
せっかく兄貴にーにに会えた貴重な時間なんだから、楽しまないと……！！

何故だか分からないが、このままではブラコンメーターがMAXになりそう。私は、ダメダメ、と首を横に振ると、気を紛らわすようにBETサンドを頬張った。
すると口にした瞬間、強張っていた表情が一瞬でパァッと輝く。

！っ、うま～！！
やっぱ兄貴にーにの特性BETサンド、美味し過ぎる……！！

少し厚切りのベーコンの塩味、フワッとした玉子焼きにトマトの甘味。更にその全てを引き立てる兄貴にーに特性のマヨネーズベースのソースが相性抜群で美味過ぎる。
口からじわ～っと心に広がる幸せ。これにはもう、溢れる笑顔を抑え切れない。
ここに来た時はお腹が空いてなかったのが嘘みたいに、BETサンドは私のお腹に消えて行く。

そんな風に食べ進める手と口を止められないでいると、台所の方から「プッ、ククッ……」って、笑いを堪える声。目を向けると、兄貴にーにが身体を震わせて笑っていた。

「お、おまっ……何1人で百面相ひゃくめんそうしてるんだよっ？
あ～……っ、ヤバ、ツボッた！っ、あはははは……！！」

それは、久々に見る兄貴にーにが大笑いしている姿だった。

ーー……笑って、くれた。
兄貴にーにが、笑ってくれた。

ここ最近はずっと真面目な表情しか見てなくて、もう私の兄貴にーにではなく、守護神ガーディアンの隊員望月もちづき 弥夜やよいしかいなくなってしまったような気がしていた私は、ただ、兄貴にーにが笑ってくれるだけで嬉しかった。
その上、

「あ～、お前見てたら僕も腹減ってきた。やっぱ、一緒に食おうかな」

「っ、うんっ！食べよ！一緒に食べよ！」

片付けを中断してタオルで手を拭くと、兄貴にーには私の傍に来てくれて、一緒に床に座ってBETサンドを食べてくれた。

それだけで幸せになれるこの気持ちーー。

この時の私はまだ、兄貴にーにへのこの感情が重度なブラコンだと……信じて疑っていなかった。

……
…………。