グレイ

第３章（４）マリィside

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「じゃあ、今から救護室そっちにお邪魔しますね」

「フフッ、待ってるわ」

そう、建物の入り口に回る春来はるき君を見送りながら、アタシは彼の中に"ある人"を見ていた。
その"ある人"とは、

平野ひらの 和希かずきーー。

彼の……。春来はるき君の伯父であり、今は亡き、アタシの恋人だった人だ。

血縁関係、って。遺伝子って恐ろしいわね。
春来はるき君の父親は、和希かずきの弟。その弟君は、それほど和希かずきに似てはいなかったのに……。

アタシの両親は男として生きられないアタシを受け入れてくれる人達じゃなかったから、守護神ガーディアンで働き出してからはろくに顔を合わせてはいない。
里帰りだって、和希かずきが亡くなってからの命日の墓参りに行くくらいで、実家に顔を出す事も、何日も里に滞在する事はなかったから……和希かずきの弟君が結婚して、子供がいる事も暫く知らなかった。

だから春来はるき君が15歳でこの守護神のガーディアン本部に来て、初めて見かけた時は心臓が止まると思ったわ。
本当に本当に、髪型が少し違うだけで瓜二つで……。和希かずきがこの世に還ってきたのではないか？と、思う程だった。

あまりに似ているから戸惑って、普通に接する事が出来るか自信がなかったから今日まであまり親しくする事は避けてきたけど……。それは、ダメよね？
彼は、どんなに似ていても和希かずきではなく別の人間で、同じこの本部で働く同僚なんだもの。

普通に。
彼は彼として接しなければーー。

そう思って、アタシは春来はるき君をお昼ご飯へと誘った。

……けれど。
どうやらアタシは、自分が思っているよりもずっとずっと過去を引きずっているのだった。

……
…………

………………。

「うわ～っ、美味そう！頂きまーす！」

「あ！コラ！ちゃんと箸を使って食べなさい！」

春来はるき君が救護室に来て、昼食を再開。
しかし、目の前に広がったお弁当に手を伸ばして、指で摘んで唐揚げを頬張った春来はるき君の姿にアタシは思わずそう怒ってしまった。
そんな自分に、すぐに「ハッ」と口を噤つむぐむ。