グレイ

第５章（４）紫夕side

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「っ、帰って来い……ッ」

俺は不器用で、口下手で……。胸の中にある気持ちはとんでもなく大きくて、言いたい事はたくさんあるのに、上手く伝えられそうにない。
だから、自分の中で1番伝えたい想いを……。大切な言葉を、言った。

「お前は俺の息子だ！こんな所で死なせねぇッ！！
絶対に、っ……絶対に！家に連れて帰るからなッ！！」

こんな言葉だけで、弥夜やよいの心を動かせるとは思っていない。
けど、今この場の状況は、俺にそれ以上の言動を許してくれなかった。

植物の魔物は再び蔓つるをこちらにシュルッと勢い良く伸ばしてくると、ハッ！として弥夜やよいから離れて構えようとした俺の腕を捕らえた。

しまったーーッ！！

振り解こうとするが、斬月ざんげつを握っている方の腕を蔓つるに封じられて、すぐに引き剥がすのは難しかった。
すると、蔓つるから逃れる事に必死になっている俺を目掛けて、また新たな蔓つるが勢いよく迫ってくる。

万事休すーー。

このまま四肢を拘束されてしまったら、一巻の終わりだった。
だが、まさに間一髪のタイミング。俺の前に瞬時に現れた黒い影が、伸びて来ていた蔓つるを一掃したのだ。

こんな所で死なせねぇ。
そう言ったのは俺なのに、逆に護られちまったな……。

そう苦笑いしながら思う俺の目の前に居るのは、双剣の魔器マギー響月きょうげつーを構えた、弥夜やよいだった。

弥夜やよいは何も言わなかった。
俺の腕を拘束していた蔓つるも切り離してくれると、すぐに敵の方を向き構える。
その姿はやっぱり、本当の父親である響夜きょうやにそっくりで……。俺は、正直悔しかった。

でも、負けたくなかったーー。

血の繋がりはなくても、弥夜やよいを大切に思う気持ちは響夜きょうやに負けていな自信が、俺にはあった。
だから、俺は弥夜やよいに背中を預けるように背後の敵の方を振り向き、言った。