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第2章(2)ユイside
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しおりを挟む「私には、っ……無理なんだよ。リディア母さんッ……」
堪えきれずに溢れた涙。
両手で顔を覆って、私は床にペタンと座り込んだ。
”ユイも美しい心で、お父さんの幸せを祈ってあげてほしい。”……。
リディア母さんが私に願った、もう一つの想い。
それすらも、自分には難しい事だった。
三年前。
アカリさんが連れ去られてしまう現場に居合わせながら、私はそれを阻止する事が出来なかった。
周りのみんなは、私がそれを悔やみ調査員の道を選んだと思ってる。
だから誰も、私が進む道を止めようとしなかった。
……けど、違うの。
私は心のどこかで、アカリさんとヒナタちゃんに嫉妬していたのだから……。
ヴァロンさんを、自分のものにしたい。と、私はいつも心の中で思っていた。
ヴァロンさんの傍に居るはずだったのは、本来リディア母さんと私。
私だって、本当の家族と幸せに暮らしたかった。
私は、目の前に広がるあの暖かい家庭を受け入れるフリをしながら……妬んでいたの。
私があの時にアランに負けたのは、そんな汚い心があったから。
私を優しく受け入れてくれていたヴァロンさんとアカリさんに甘えながら、ふとした時にもう一人の私がチクチクと胸を突いていた。
「良い子じゃなくて……ごめんなさいっ」
独りきりの空間には、返事がない。
両親の想い出が詰まった家の中なのに……。私は今も、独りぼっちだった。
後悔の気持ちから、調査員になりたかったんじゃない。
私は、きっと自分自身が許されたかっただけなのだ。
……
…………。
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