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第3章(3)アカリside

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【自宅】

「ヒナタ、ヒカル。
今からママの話を聞いてくれる?」

ユウさんのプロポーズを断った夜。
私は居間で子供達の前に座り、ゆっくりと一冊のアルバムを広げた。

そこに写っているのは、ヴァロン。
私と、ヴァロンと、赤ちゃんの頃のヒナタと撮った写真の数々。
ヒナタとヒカルは記憶にない人物の写真を目にして、ただじっと写真に写るヴァロンの姿を見つめていた。


「……この人がね。
ヒナタとヒカルの、パパだよ?」

初めて子供達の前でヴァロンの写真を見せて、そう告げた。

今までずっと、隠してきた。
いつ会えるかも分からない父親の存在を知らせるのは、子供達を傷付けるだけだと思っていた。


……けど、違う。
私は、自分がそう告げたくなかっただけ。
私は、自分自身が傷付く事を恐れていたの。

ヴァロンへの想い出や気持ちを封印して生きて行く事が、子供達の為だと思っていた。


でも、それは間違いだった。
気付かせてくれたユウさんの為にも、もう逃げてはいけない。


写真を見つめて目を丸くするヒナタとヒカルに、私はなるべく分かりやすく話し続けた。

私とヴァロンがとても愛し合って結婚した事。
お仕事が忙しくてあまり一緒には居られなかったけど、とても幸せだった事。
ヒナタを身籠って、産まれて、とてもパパは喜んでくれた事。……色々。

そんな私の話を子供達は写真を見つめたまま静かに聞いていたが、暫くしてヒカルが呟くように尋ねる。


「ひかるのは?……ないの?」

”ひかるのはないの?”
おそらく、自分とヴァロンが写っている写真が一枚もない事に疑問を抱いたのだろう。

私は悲しそうな表情の息子に手を伸ばすと、両手でその小さな顔を包むようにして伝えた。
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