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第3章(3)アカリside
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しおりを挟む「ヒカルの名前はね、パパが付けてくれたのよ?
ママとパパが二人で出掛けた初めての旅行先で、綺麗な星空を見て言ってくれたの。
”また家族でここに来て、一緒に星空を眺めよう”って……」
思い出しながら口にすると、次々と溢れてくる暖かい感情に視野が滲む。
忘れる事なんて出来るはずもない、幸せな思い出。
自分はなんて馬鹿で愚かだったのだろう。
忘れるのではなく、”想い出と一緒に生きる”。
それこそが、今の私に……。ううん、私と子供達が生きていくのに1番必要な力だったのに。
「ヒカルの名前には、パパとママの大切な想い出が詰まっているの。
産まれる前に離れ離れになってしまったから、ヒカルとパパが写ってる写真は一枚もないけど……。愛していないなんて、思わないで?」
今ここに居たら、ヴァロンは絶対に喜んで幸せそうに微笑っている。
大好きな笑顔で、微笑ってくれてた。
……好き。
そう、私は……ヴァロンが大好きなの。
今でも鮮明に浮かぶ愛おしい笑顔に鼓動が高鳴って、私は目の前の子供達を包むように抱き締めた。
「パパは、すぐには帰って来られないかも知れない。
もしかしたら……このまま会えないかも、知れない。
……でも。ママと一緒に、ここでパパを待ちながら生きてくれない?」
子供達に悲しい思いをさせたくなかった。
私の勝手な思いで、パパがいないという事で嫌な思いをさせたくないと思った。
……けど。
私が本心を封じて、嘘をついて、偽りの笑顔でいる事の方が、ずっと子供達を傷付けていた。
だから、もう嘘は付かない。
「ママね、今もパパの事が……好きなのっ。
パパの事がっ……大好きなの」
”パパの事が大好き”。
今まで封じてきた想いを打ち明けて、私は子供達の前で初めて泣いた。
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