上 下
41 / 163
第3章(3)アカリside

3-2

しおりを挟む

「ヒカルの名前はね、パパが付けてくれたのよ?
ママとパパが二人で出掛けた初めての旅行先で、綺麗な星空を見て言ってくれたの。
”また家族でここに来て、一緒に星空を眺めよう”って……」

思い出しながら口にすると、次々と溢れてくる暖かい感情に視野が滲む。
忘れる事なんて出来るはずもない、幸せな思い出。

自分はなんて馬鹿で愚かだったのだろう。
忘れるのではなく、”想い出と一緒に生きる”。
それこそが、今の私に……。ううん、私と子供達が生きていくのに1番必要な力だったのに。


「ヒカルの名前には、パパとママの大切な想い出が詰まっているの。
産まれる前に離れ離れになってしまったから、ヒカルとパパが写ってる写真は一枚もないけど……。愛していないなんて、思わないで?」

今ここに居たら、ヴァロンは絶対に喜んで幸せそうに微笑っている。

大好きな笑顔で、微笑ってくれてた。


……好き。
そう、私は……ヴァロンが大好きなの。

今でも鮮明に浮かぶ愛おしい笑顔に鼓動が高鳴って、私は目の前の子供達を包むように抱き締めた。


「パパは、すぐには帰って来られないかも知れない。
もしかしたら……このまま会えないかも、知れない。
……でも。ママと一緒に、ここでパパを待ちながら生きてくれない?」

子供達に悲しい思いをさせたくなかった。
私の勝手な思いで、パパがいないという事で嫌な思いをさせたくないと思った。


……けど。
私が本心を封じて、嘘をついて、偽りの笑顔でいる事の方が、ずっと子供達を傷付けていた。
だから、もう嘘は付かない。


「ママね、今もパパの事が……好きなのっ。
パパの事がっ……大好きなの」

”パパの事が大好き”。
今まで封じてきた想いを打ち明けて、私は子供達の前で初めて泣いた。
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

史上最悪の王妃は2度目の人生を与えられました

oro
恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:514

悲し寂しい時に

エッセイ・ノンフィクション / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

その関係はこれからのもの

BL / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:4

後宮で侍女になった私は精霊に好かれている

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:90

1999年 魔都 魔王による世界統一

SF / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

-アプリ- 最後の1人

ホラー / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:2

泡沫の香り

H2O
青春 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

処理中です...