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第4章(1)アカリside
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しおりを挟むすると……。
その先には片手で自分の顔面を押さえて、地面に片膝を着いている男性の姿。
「!……だ、大丈夫ですかっ?!」
ヒカルが投げたボールが当たった。
ヒナタの言った事が正しいのならば、当たったのは二歳児が投げたボールでさほど威力などないはず。
そう思ったが、男性に駆け寄り驚く。
男性の足元には、おそらくボールが当たって壊れてしまったのであろう黒縁の眼鏡が落ちていたからだ。
サァッと顔が青ざめる。
「っ……す、すみません!私が目を離していてっ……!
あのっ、お怪我はっ……ッ」
もしかしたら、眼鏡の破片で怪我をしてしまっている可能性も充分あった。
色々な考えが巡りすっかりパニックになっていると、男性は顔面から手を離して、私の方を……見た。
「……いえ、大丈夫です。
僕の方もボーッとしていたので……」
「!……。え……?」
男性の声に、胸がドキンッと、跳ねた。
「気にしないで下さい。……ね?」
黒に近い灰色の髪と瞳の男性が、そう言って私にぎこちない微笑みを見せる。
呼吸が、一瞬止まる。
それなのに、鼓動が高鳴って、熱くなる。
私の全身が”この人だ!”って、”やっと逢えた”と騒ぎ始めた。
忘れるはずのない、間違えるはずのない、声。
私は彼がどんなに姿を変えていようとも、必ず見付ける事が出来る。
目の前にいるのは、ヴァロン。
ヴァロンが、目の前にいる。
……けど。
何か少し、様子が違う。
「あ……、っ……」
「?……大丈夫、ですか?」
戸惑う私の反応を見て、男性は心配そうに首を傾げた。
その表情は、まるで私の事なんて覚えていないような……。いや、知らない人を見るような眼差し。
ヴァロンじゃ、ないの?
似ている、だけ……?
口からなかなか出せない問い掛けが、私の心の中で震えながら寂しく響いていた。
……
…………。
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