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第4章(1)アカリside
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しおりを挟む”アカリにはチャレンジ精神が足りないな。
こういうのは、実力や技術とは違う力なんだから何でもやってみればいいのに”……。
そう言って、ヴァロンは微笑ってたなぁ。
「実力や技術とは違う力、かぁ……」
私は噴水を見つめて「よしっ!」と決意すると、シートから立ち上がり斜めがけの小さな鞄に入っていた財布から小銭を一枚取り出して、手の平に握り締めた。
何でかな?
今なら何でも出来る気がしたんだ。
噴水の正面に行くと背を向けて、深呼吸すると、そこからゆっくりと10歩歩く。
私の挑戦に、おそらく言い伝えを知っている人達から拍手や励ましの言葉が掛けられた。
一歩一歩足を進める度に、心臓がドキドキと脈を強く打つ。
でもそれは、周りの人目を気にしているからではなかった。
成功したら、ヴァロンにまた逢える。
私はその確率に、コインが受け皿に入る奇跡を重ね合わせていたからだ。
ヴァロン、もう一度貴方に逢いたい!!
10歩歩いて足を止めると、私は両手でコインを握り締めて祈った。
その時サァッと吹いた風が、私が鞄に付けていたお守りの猫バロンの鈴を鳴らす。
「奇跡のカケラは、自分で掴まなきゃダメだよね?」
キッカケというカケラを自分で掴んで、初めて奇跡という力に変わる。
昔、自分が言った事だ。
もう、迷わない。
私は身体の力を抜いて、どう投げたらいいか、とか余計な考えも省いて……。
コインを、自分の背にある噴水に向かって、投げた。
……
…………。
目をギュッと閉じて、噴水の中に落ちるコインの音に耳を澄ませていると……。
「ママ~!!たいへん!!」
「!……えっ?」
聞き覚えのある声に、思わずハッとして目を開ける。
その直後に目に入ってきたのは、慌てて私の脚にしがみ付く娘のヒナタの姿だった。
「ママ~たいへんなの!
ヒカルのなげたボールが、おにいちゃんにあたっちゃったぁ~!」
突然の事で、状況がすぐに理解出来ない私。
娘が指差す方にゆっくり視線を向ける。
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