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番外編 想い出の宝箱〜ヴァロンside〜
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しおりを挟むギルの娘。
確か、俺の記憶が正しければ今3歳位だろうと思う。
そんなガキを俺に紹介ってーー。
何だ?
俺にベビーシッターでもしろって事か?
そんな思いを巡らせる俺に、ギルは自分の娘の事をまさに”親バカ”という言葉がピッタリな位に話し始めた。
そんなに自分の娘を褒めまくって、恥ずかしくないのか?って呆れるくらい……。
そして、トドメの一言。
「本当に、可愛いんだよ!
でも、ヴァロン君になら嫁にあげてもいいな~!!」
「……。
分かっちゃいたが、お前は馬鹿なのか?」
今日はこれ以上ギルを傷付けるような発言を控えようと思っていたのに、俺は思わずそう言ってしまった。
「バ、バカじゃないよ!僕は真剣にっ……」
「お前の娘、いくつだよ?」
「え?この間、3歳になったよ!」
「……」
真顔で見つめる俺の顔面に指を三本立てて、満面の笑みで見つめるギル。
もはや、溜め息も出なかった。
「……俺に犯罪者になれと?」
「えっ?大丈夫だよ!
あと10年……?いや、15年位経てば年の差なんて!」
「時が経っても年の差が縮まるか!
俺をロリコンにしてぇのかよ、お前はっ……」
馬鹿馬鹿しくて相手に出来ない。
この話は止めにしようと、飲み物を買いに行く為に花壇から立ち上がろうとした俺に、ギルが言葉を続ける。
「世の中、何が起こるかなんて分からないじゃない」
「……」
「僕とヴァロン君が出会って、一緒に夢の配達人をやってる。
数年前は想像もしなかった事が、僕には起きたよ?」
そう言ったギルの言葉が妙に響いて、俺は振り返った。
目が合ったら、「ねっ?」ってギルが笑ってて……。
一瞬、「そうだな」って言いそうになった。
「……ガキはお断りだよ」
けど。
俺はフッて笑って、結局話を逸らしたんだ。
これが、ギルとまともに顔を合わせられた最期の日だという事も知らずに……。
〈回想終了〉
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