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番外編 想い出の宝箱〜ヴァロンside〜

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……
…………。

こんな事になるなら、声を掛けなければ良かった……。と、罪悪感でいっぱいの俺。

でも。
ギルは振り返って、俺を見て微笑んだ。


「……ね、ヴァロン君!
少し時間あるかな?久し振りに話そうよ」

「え?あ、ああ……」

屈託のない、ギルの笑顔。
無神経な言葉を発した俺を決して責めない、嫌味のない表情。

俺は素直に返事をすると、ギルに誘われて片隅にある花壇に一緒に腰掛けた。


「……さっきの宝石箱ね。オルゴールになってるんだけど、奥さんと初めて一緒に観たミュージカルの想い出の曲なんだ」

隣に座っている俺に、ギルは話してくれた。
あの宝石箱に込められた、想いを。


「明るい里って書いて、”明里”って曲。
……実は、娘の名前はそこからとって”アカリ”なんだよね」

「……へえ」

幸せそうに、語るギル。


その姿があんまり幸せそうだから、いつの間にか罪悪感とか薄れていって……。
俺も自然と表情を緩ませた。

そんな俺を見て、ギルもまた一層と微笑む。


「いいプレゼントのセンスしてんじゃん」

「ほんとっ?ヴァロン君にそう言われると、自信がでるな~。
……よし!そうと決まったら、何としてもあの宝石箱を買わなきゃね!」

そう言って、拳を握り締めて気合いを入れているギルはとても眩しかった。
夢の配達人白金バッジの俺よりも、キラキラと輝いていた。

特に何の目標もなく、ただひたすら仕事を熟す俺とは違って、愛する家族の為に働くギル。


……俺には、想像も出来ない姿。
誰かの為に、なんて考えられない。

そんな俺に、ギルは突拍子もない事を言う。


「あ!そうだ、ヴァロン君!
そろそろ家に遊びにきてよ?アカリを君に紹介したいんだ!」

「……は?」

遊びにきてよ、はともかく……。
奥さんを飛ばして一気に娘を俺に紹介したいというギルの言葉に、俺は首を傾げた。
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